(日文原版轉載)大學院生女王様と大學生奴隷

(日文原版轉載)大學院生女王様と大學生奴隷

作者:A8a85626692

カリカリカリ………

靜かな空間の中でシャープペンシルや鉛筆の音だけが響いている。

部屋の中には51人の人間がいて、そのうちの50人が機に向かい必死にペンを走らせている。

そして1人はその様子を見る試験監督。

テストを受ける50人はこの大學の化學科の學生。彼らが今受けているのは、化學科の必修科目の前期期末試験だった。

化學科の學生は一學年30人。テストを受けている50人のうち30人は一年生。20人はこの授業の単位をまだ習得できていない上級生で、15人が二年生、3人が三年生、2人が四年生だ。

この授業は難解な分野を扱っており、かつ単位認定の基準が厳しいことで有名であって、一度で合格できる學生は半分ほど。だからこそ全員が目を血走らせて答案を睨みつけている。

「ふぁ………」

50人の緊張感とはかけ離れたような小さなあくびを漏らしたのは、試験監督をやっている……正確には擔當教授に押し付けられた、大學院生だった。

(なんで私がこんなことを……)試験が始まる10分前、教授が學生研究室にノックもせずに入ってきた。

太った體で白い髭を口周りにたくわえたその男は、たまたま午前中から登校して一人でデータの整理に勵んでいた女學生を見つけた。

「おお松田ちゃん! いてくれて良かった。私は今から用事があるのだが、今日が私の授業のテストだということを忘れていたんだ!」

「はぁ……」

慌てた様子で捲し立てる教授を見て、松田と呼ばれた女學生は両耳に付けていたイヤホンを外した。お気に入りの音楽にかき消されて教授の前半の言葉はよく聞こえなかった。

「そこで悪いが、試験監督を頼む。教室は807でテストはこれだ。それじゃあ!」

「………」

女學生が何か答える間もなくバサリと松田のデスクに紙束の入った封筒が置かれ、研究室には教授が亂暴にドアを閉めた音が殘った。

(いつも、急なんだから……)この女學生の名前は松田カコ。今しがた勝手な依頼をしていった教授の受け持ちの學生で、マスターコースの2年生だ。

カコは研究者としては教授のことを尊敬している。彼が発見し論文にして化學會に殘した功績は偉大だからだ。

また、教育者としても尊敬している。彼が行う授業は基礎知識から発展的な內容までを効率的かつ高密度に學べるカリキュラムとなっており、履修した學生にとって大きな糧となるからだ。そのためテスト範囲が広くなり単位を落とす學生も少なくないが、それは本人達の努力不足だとカコは考えていた。

しかし、人間としては尊敬していない。

何故なら教授には無責任かつ無計畫なところが多く、こうしてしょっちゅう雑用を押し付けられているからだ。

(早く終わらないかな……研究室でコーヒーが飲みたい……)テスト開始からまだ15分。カコは後輩達の集中を削がないように気をつけながら小さく伸びをした。

(………ん?)體を伸

ばし、視線を上げたカコの視界には妙な物が映った。

(あらあら……)カコは小さくため息をつく。彼女が目にしたもの、それは手元の小さなメモを見てそれをテストの答案に書き寫す一人の男子學生の姿だったからだ。

カコが眠そうな顔をして座っていたためやりやすいとでも思ったのか、その男子はひたすらカンニングペーパーを見てその內容をテスト用紙に書き寫す作業を続けていた。

(あら……)カコはその男子を見て少し気分が高揚した。何故ならその男子は體がとても小さく、幼い顔立ちをしている。身長は160少々と推定され、165センチ以上あるカコからすれば見下ろせるような低身長。

つまり、カコの好みのタイプだった。

(……最近ご無沙汰なのよね。ちょうど良いわ。新しい玩具にしてあげようかしら)カコが不穏な笑みを浮かべながら椅子から立ち上がり歩き始めると、その男子は一度テスト用紙の下にカンニングペーパーを隠した。しかし試験監督であるカコは自分が座っている窓際の列でなく廊下側の方に歩いて行ったため、ひと安心して再びカンニングペーパーを取り出した。

「あっ!」

その男子は思わず聲を上げてしまった。何故なら自分が見ていたカンニングペーパーを突如、現れた白く細長い2本の指が摘んで持って行ってしまったのだから。

カコに後ろから回られてカンニングペーパーを取り上げられたのだ。

幸い聲に反応して振り向く他の學生はいなかった。

「後で來なさい」

そしてカンニングペーパーを攫っていった指の持ち主……カコは男子學生の耳元にそう囁いたあとは振り向く事もなく歩いていき、先程まで座っていた椅子に再び座った。

(終わっ………た……)男子學生は絶望した。ペーパーを取られたということは完全にカンニングがバレてしまったということ。どういう処分になるのか、自分はどうなってしまうのか。実家に連絡は行くのか、とその男子は嫌な汗をかきながら、自力では全く解くことの出來ない答案を眺めているしかなかった。

(あの先輩は…たしか、松田さん……?)男子は、同級生の何人かが『マスターコースにスタイルがいいのにめちゃくちゃ巨乳で、美人な先輩がいる』と噂しているのを聞いたことがあり、テストが始まる前にその連中が『ラッキー、松田さんだ!』と小聲で騒いでいたのを覚えている。

確かに噂に違わぬ綺麗な顔と、服の上から見てもわかる巨乳。

普通の狀況ならば目の保養として眺めていたいような女性だが、今の彼にとっては自分の命運を握る死刑執行人のように見えていた。

(馬鹿な子……)カコは怯えた目でこちらをチラチラ見ている男子を橫目で一瞥したあと、取り上げたカンニングペーパーを見てみると、そこには手書きで小さなメモがビッシリと書かれていた。しかし少し內容がズレており、仮にこの解答を全てテスト用紙に書き込めたとしても不合格になるだろう。

何故そんなことが分かるかといえば

、未採點の答案を持った教授が學生研究室の扉を亂暴に開け「君たち!採點を手伝ってくれ!」

と叫ぶイベントが半年に一度、教授が學生に成績をつける時期が訪れる度にあり、カコも研究室に配屬された四年時からずっと手伝わされているからだ。

だから教授が作るテストの採點基準や正確な解答を知っている。

尤も、この科目を全て首位で単位認定されてきたカコにとっては何も見ずに採點することも可能であるが。

チャイムが鳴り、答案を提出し終えた他の學生達が出ていくと、教室にはカコとその男子だけが殘された。

「……あなた、名前は?」

「森本……サクヤです……」

「そう。サクヤ君。私はこのカンニングペーパーとあなたが書いた答案を先生の所に持って行って、あなたがした行為を報告しなきゃならないんだけど。いいかしら?」

「あ、あの……!松田さん、その、僕は、どういう処分に……」

「とりあえず、化學科の先生達の査問會にかけられるわ。確定しているのはこの前期の全科目の単位沒収と半年間の謹慎だから……まあ、一年生をもう一度最初からやる事になるのかしらね?」

「そ、そんな!」

「明らかな不正行為、學問への冒涜。これくらいは當然でしょ?今のうちに御両親に電話しておいたら?」

「う、ううう………」

サクヤは膝を折り、椅子に座るカコの前に跪いて泣き始めた。

童顔で背が低いサクヤが泣いている姿を見て、カコはゾクリと背中を震わせた。

(決めた。この子を私の……)カコはフフッ、と小さく笑ったあと口を開いた。

「でも、あなたがちゃんと反省したと私に示せるのであれば私の所で報告を止めてあげてもいいわ。その気があるのなら今夜7時に私の部屋に來なさい。來なかったらその時點で教授にメールを入れるから」

カコは手帳に自分が下宿しているアパートの住所を書きつけ、ページを切り取ってサクヤに渡した。

その瞬間サクヤの顔はパアアと明るくなり、カコに頭を下げた。

「ありがとうございます! ま、松田さん! あなたは俺の、女神です!」

「ふふ、女神……ね。あなたが私のことをずっとそう思えると良いんだけど」

「…………?」

サクヤはその言葉の意味はよくわからなかったが、とりあえず首の皮一枚で繋がったのは確かであり、カコへの感謝の気持ちは変わらなかった。

ピンポーン………ガチャ、ガチャリ「あら、來たのね」

サクヤがメモに書かれたアパートの部屋の呼び鈴を鳴らすと、部屋著に著替えたカコがサクヤを出迎えた。

部屋著のカコはハーフパンツにTシャツというラフな格好だった。外で著ている服とは違い、胸の大きさがハッキリと分かる。カコの胸はサクヤが想像していたよりも二回りも三回りも大きかった。

「入りなさい」

「……はい」

カコは胸元を凝視するサクヤを特に気にせず玄関に上げると、ドアに鍵をかけた。カコがチェーンロックまでかけているのをサクヤは少し不穏に感じたが

、用心深い人なのか?と思うだけでそれ以上は特に考えなかった。

部屋に入ると中はフローリング張りとなっており、カコは機の前にあるキャスター付きの椅子を摑んで部屋の中央に転がしてから座ると、腳を組んだ。

「そこに座りなさい」

カコが指さしたのはカコが座る椅子の前にあるただの床。

「………?」

サクヤはよく分からなかったが、とりあえず言われた通りの場所に座った。

あぐらをかいて座ろうとしたが、自分を見るカコの妙な迫力に気圧されて自然と正座で座ってしまった。

「あなたにある選択肢は二つ。『私に規定通り報告されて正式な処罰を受ける』か『この書類にサインをする』かのどちらかよ」

カコはそう言って、持っていた一枚の紙をサクヤの前にヒラリと舞わせた。

「読んでごらん」と言われたサクヤは、その紙を手に取り読み始めた。

『奴隷懇願書』

私は自身の性癖であるマゾヒズムを満たすため、松田カコ様に私の支配者として振舞って頂き盡くさせて頂くことを心より願います。

松田カコ様の命令には絶対に従い、かつ常に松田カコ様に御奉仕させて頂く精神を持ち続けます。

もしも私が至らぬ場合には松田カコ様に折檻して頂き、傷や障害を負い萬が一死亡する事があっても、松田カコ様は私のマゾヒズムを満たすために深い慈愛によりプレイに付き合って下さっている御方であり、松田カコ様には一切の責任は御座いません。

またこの関係は松田カコ様が大學院を卒業なさるまで継続させて頂きます。

文章の下には、日付と自分のサインを書く場所が設けられている。

「ま、松田、さん……僕は、あなたの奴隷になるということですか……?」

「質問は許可しないわ。さっきも言った通りあなたはどちらか選ぶだけよ。カンニングを報告されるか、ここにサインするかをね」

「……………」

サクヤは再びもう一度紙を読み直したり、目の前で腳を組んで座るカコを見上げたりした。

(どうすれば……?)諦めて一年留年するのか、ここでこの不気味な紙にサインをするのか。

必死で大學に合格し、田舎から出てきた。地元の高校のレベルを考えると奇跡だと言われようなレベルの大學に受かったおかげで、両親も友人もみんなが祝福してくれた。

しかし講義のレベルは自分の想像以上で、少し浮かれていた自分はあっという間に置いていかれて訳が分からなくなった。

なんとか他の科目は猛勉強の末に単位を取れるくらいにまでは到達できたと思うが、今日のテストだけは範囲も広く高密度で全く太刀打ちできなかった。

そして仕方なくカンニングペーパーを用意して挑んだ結果がこれだった。

留年を知ったら両親や友人は失望するだろう。何としてもその事実を実家には隠したい。

「……します。サインを……」

「そう。じゃあこれを使いなさい」

カコはサクヤにボールペンと朱肉を渡した。意味がわからないという表情をするサクヤにカコは「拇印よ。あなた

の親指にインクをつけてサインの隣に押しなさい」と説明した。

「…………ッ!」

改めてその紙を前にしてペンを持つと、そこから発せられる不気味な雰囲気が再びサクヤを襲った。

しかし、ここで手を止めて逃げたとしてもカンニングを報告されてしまうだけ。サクヤに選択肢はない。

唯一の救いは期限付きであることだった。カコが大學院のマスターコース二年生であることを考えると、どれほど酷い狀況にされたとしても卒業するまであと半年だけ耐えれば良い。

その事実が少しサクヤの心を助け、ペンを摑む手を軽くした。

「………出來ました」

「ん♡」

サインと捺印が終わってカコに紙を渡すと、カコはそれまでの冷靜な雰囲気とはかけ離れたような明るい笑顔を見せた。

そして鼻歌を歌いながらその紙を部屋に置いてあるプリンターでスキャンした後、パソコンを少し操作した。

そしてその後スマートフォンを操作し「よし♡」と言うと、畫面をサクヤに見せた。

「奴隷懇願書、データ化して私のクラウドにアップロードしたから。もうこの紙を捨てても無駄よ」

サクヤはカコのスマートフォンの畫面に表示されている先程の用紙を見せられた。

「ぼ、僕はこれから……何を、させられるのですか……?」

「ふふ、まずは著替えましょうか。奴隷用の服を出してあげるから服を脫いで待っていなさい」

「……?」

サクヤが意味がわからないという顔で立っていると、「早くしなさい」とカコに悽まれてサクヤは仕方なくパンツ一枚となった。

カコは部屋の中から色々な物を持ってきてサクヤの前に置いた。サクヤはそれらが何なのかはほとんど分からなかったが、その中に服らしきものはひとつもなかった。

「私は『服を脫ぎなさい』といったよね。あなたのそれは何?」

「ぱ、パンツです……だって……」

「脫ぎなさい。私はあなたのマゾヒズムを満たすために仕方なくあなたを調教してあげるのよ?反抗は許さないわ」

「いや、それは松田さんがサインしろって言うから……」

パァンッ!!

「うぶうっ!」

突然、サクヤの頬に平手打ちが入った。

カコが右手でサクヤの左頬を思い切り打ち抜いたのだ。

「あなたの罪は二つ」

打たれた頬を抑えカコを見上げるサクヤを見下ろしながら、カコは言った。

「一つは命令に従わなかったこと。もう一つは私の呼び方を間違えたこと。私の事は『カコ様』と呼びなさい。貴方のことは『サク』とでも呼ぶわ。呼ばれたら1秒以內に返事をしなさい」

サクヤは突然の平手打ちによる痛みに震えながら、小さく頷いた。

サクヤは家では可愛がられながら育てられた末っ子で、叩かれたことなどほとんどなく、怒られたことすらも少なかった為、こういった行為への耐性はまるでなかった。

「脫ぎなさい」

「はい………」

サクヤは抵抗せず、パンツを脫いで床に置いた。

「じゃあ、まずはこれね」

カコは二つの250mlのペットボトルが

ぶら下げられた犬用の首輪を手に持ち、サクヤの首に付けた。

二つのペットボトルにはそれぞれ、透明な液體と薄く青みがかった液體が入っているのが見えた。

「……?」

サクヤはその液體の正體を知りたいと思ったが、カコが怖くて話しかけられなかった。

「あとは、これね」

カコがそう言って手に取ったものは、サクヤは全く何なのか知らないものだった。

「これは貞操帯っていうの」

ポカンとした表情のサクヤを見てカコはふふ、と笑い、貞操帯を手に取りサクヤの男性器を摑むとカチャ、カチャと裝著を始めた。

「よし、OK。これであなたはこの鍵なしではオナニーが出來ない」

カコは最後に南京錠で貞操帯をサクヤの男性器に完全に固定した。

「えっ?」

オナニーが出來ない、という言葉にサクヤは困ってしまった。何故ならまだ18歳で性慾旺盛なサクヤは、ほぼ毎日自慰をしていたからだ。

「今後、オナニーしたい時は私に許可を取ってからね。まあ私がこれを奴隷に付けるのは男の汚い射精なんか想像もしたくないからだから、許可なんてしないけどね」

「そ、そんな……じゃあ、僕はもう奴隷の間は……」

「射精禁止ということ。諦めなさい」

強制射精管理。カコはサクヤの前に何人かの男を調教した過去があり、いずれの奴隷達もカコから射精が許可されたことはなかった。

これはカコの「奴隷に快楽は不要」という徹底したサディズムから來る考え方で、奴隷達は何度土下座して泣きながら貞操帯を外させてくれと懇願してもカコは許可しなかった。

カコがこれまでにやってきた女王様としての活動、調教がサクヤに語られる事は無いが、カコは大學生になってから表の顔は普通の大學生・大學院生を演じながら裡ではインターネット等で募集した奴隷をこの部屋で何人も調教した。

しかし半分が貞操帯を付けたまま逃走、半分がカコのみを絶対的な女神として崇拝するだけの廃人となり日常生活を送れず使い物にならなくなったので捨てた。

カコの調教が苛烈過ぎるのがその原因であるということは明らかであるが、カコは自身のサディズムを満たすために奴隷に手加減などはしない。

奴隷がそれを受け止められようが受け止められなかろうが、カコは自身の性癖とプレイを相手に押し付けていくだけだ。

過去に調教してきた奴隷はマゾを名乗り自分から志願してきた者が大半であり、カコが弱みを握り強制的に奴隷にした者は少數。

サクヤはもちろん後者に當たるが、弱みを握り強制奉仕を強いた奴隷達はその弱みのせいで逃走することが出來ないため、今まで全員を廃人にしてしまった。

(今回は久しぶりの脅迫パターン。プラス可愛い! だからたっぷり可愛がってあげないとね♡)「貞操帯は私の許可なく外すことは許さない。でも首輪と液體は外に出る時は外しても良いわ」

「は、はい……」

「今から『洗禮』をするわ。さっき付けたばかりだけど、首輪は外してなさい」

カコはそう言うとサクヤに首輪を外させ、部屋の収納を開けてその中に入れてある箱から何かを取り出した。

カコが取り出したのは、50センチから60センチ程の乗馬鞭。

「ふふっ」と笑いながらその場で軽く素振りをすると、それはビュオン、ビュオンと鋭く空を切る音を立てて、サクヤを震え上がらせた。

「あの、か、カコ様……?」

サクヤは呼び慣れない『様』付けでカコに話しかけた。

「なあに?」

「そ、その、今からそれで僕を……」

「ええ、叩くわ。でも安心なさい。別に縛り付けて一方的に叩くというわけじゃないの。あなたにも勝つチャンスはあるのよ」

「……?」

サクヤにはカコの言葉がわからない。何かの勝負をするのか? と思いながら次の言葉を待つ。

「私はこれを使うけど、あなたも私に攻撃していいわ。あなたが私を押さえつけて私に『降參』って言わせたらさっきの奴隷懇願書も完全に破棄してあげる」

「ほ、本當ですか!?」

「ええ。私に何をしてもいいわよ。降參って言った方が負けね」

サクヤは心の中で小さくガッツポーズをした。女であるカコをただ押さえつければ良いのであれば、そこまで難しくもないはず。

カコは「鞭があなたに當たった時、あまり大きな聲を出されるといけないから」と言ってタオルを猿轡としてサクヤの口に噛ませた。

「じゃあ、始めましょうか」

カコが少し離れてそう言うと、サクヤは真っ直ぐカコに腕を伸ばした。

パァン!

「ングウッ!?」

一瞬。カコは伸ばされてきたサクヤの右手首に乗馬鞭を素早く打ち込んだ。サクヤは突然の激痛に、思わず打たれた手首を左手で摑み強く握った。

「フフッ!」

サクヤがしまった、という表情をした時にはもう遅い。

カコは大きく鞭を振り上げてサクヤの頭に真上から打ち込むように鞭を振り下ろした。

「……ッ!」

サクヤは慌てて両手を固く握って拳をつくり、頭を守った。固くした拳で受け止めれば鞭に耐えられると思ったからだ。

しかし、上から振り下ろす途中でカコは手首にスナップを使って鞭の軌道を変えた。鞭は蛇のようにうねりながら、サクヤが両拳で守った頭などには興味が無いと言わんばかりに避け、両腕を上げたサクヤの無防備な脇腹に食らいついた。

スパアアアアアアアアアアアン!!!!

「んぐううううううううううう!!!!????」

サクヤは生まれて初めて味わう異次元の痛みに耐えきれず、打たれた脇腹を抑えて蹲ってしまった。

「あら、もう終わり?」

スパアアアアアアン!!!

カコはサクヤの無防備な背中に鞭を振り下ろした。

「んぎいいいいいいいいいい!!!!」

サクヤはもう右手首と脇腹と背中の痛みで何も考えられない。ただ蹲って涙を流しながら痛みに悶えることしかできない。

「クスクス……そうやって固まっちゃったら、こうなるわよ?」

ヒュオンッ!

鞭を持った女性を前に無抵抗で蹲る。その危険性にサクヤが気

づき動こうとする前に、サクヤの背中に向けて再び鞭が振り下ろされた。

スパァン!!

「うぎいいいいいいい!!!」

(だ、だめだ!動かないと!俺も相手に何かしないと!)サクヤは再び與えられた痛みにさらに悶えつつも、固まっていれば一方的に打ち込まれることを理解し、なんとか腳に力を入れて立ち上がるとカコに両手を伸ばした。

「胴(どう)っ!」

スパアアアアアン!!

しかしサクヤが両手を伸ばして前に進むと同時に、カコは美しい足さばきでサクヤの體の左側に進みながら、その途中で手首を返してサクヤの右の腹に強烈な鞭を打ち込んでいった。

「んむ、むあああああああああ!!!!」

サクヤは再び崩れ落ちた。右腹に走った鞭の衝撃は皮膚を貫通して內臓にまで打ち込まれたかのような痛みで、まともに呼吸が出來なくなるほどだった。

「うふふ。実は私、小學校から大學まで剣道してたの。けっこう強かったのよ?院生になってからはやめちゃったけど。鞭は片手だけど、手首の返しや打ち込む時のスナップは似てるからね」

先程の動きを見ればカコの言葉が噓でないことはわかる。打ち込みの鋭さ、フェイントや駆け引きの上手さ、足さばきの滑らかさといった全てが、明らかに熟練した者の動きであった。

「どうする? まだ勝負する?」

「………!!」

サクヤは慌てて左右に首を振った。勝てるわけがない。ものの一分の『勝負』でサクヤは鞭を持ったカコに絶対に勝てないことを理解した。

(ふふふっ………)カコは心の中で笑った。しっかりと躾の第一歩が出來たからだ。

動物の躾でも共通する事だが、まずは相手に「戦っても勝てない」ということを理解させるのはとても大事なプロセスである。

仮に相手がドMで、自ら調教を志願してきたとしても、いざと言う時に暴れられてしまえば興冷めであるし、何よりカコ自身が危険に曬される事になる。

だから、特に男相手には「本気で飛びかかってもこの人には勝てない」ということをしっかりと體に理解させる必要がある。

ほんの數発の鞭であるが、カコが子供の頃から大學まで続けた剣道と大學から女王様として鍛えた鞭さばきはサクヤに到底自分が太刀打ちできる技術ではないと理解させた。

つまり、どちらが『上』なのかをハッキリさせたのだ。

「ん? まだ勝負するの?」

カコは再び同じ質問をした。

「んー!! ん、んー!!」

サクヤは激しく首を振る。もう二度と鞭を味わいたくないからだ。

「んー? あなたが負けを認めないなら、私はまだ打ち込むしかないんだけど……」

「んんー! ん、んんーー!!」

サクヤは必死に首を振る。負けを認めたい。もう逆らわない。何故その意思がカコに伝わらないのかと苛立ちさえも覚えながら必死に首を左右に振る。

「だって、決めたでしょう?『降參』って言った方が負けだって♡」

「!!」

サクヤはこの勝負のルールを思い出した。このままでは発

音できない。慌てて両手を頭の後ろに回して猿轡を外そうとした。

スパアアアアアアアアアン!!!

「ンムギイイイイイイイイ!!!!!」

サクヤが両手を上げて猿轡を外そうとした瞬間、カコの鞭は無防備になった脇腹を捉えた。

「そう。そんなに私との勝負を続けたいのね? それなら私も遠慮はしない。ちゃんと勝敗をつけましょうか♡」

カコはニッコリと笑い、ペシッ! と右手に持った鞭で自分の左の掌を軽く叩いた。

先程までは相手に『どちらが上か』を教える時間。しかしここからは『カコ様の恐怖』を教える時間なのだ。

(ふふふ、體の芯まで私への恐怖で染め上げてあげる…)カコはニヤリと笑い、鞭を振りかぶった。

「ッ!!」

サクヤはとっさに脇腹を庇い、體を丸くした。脇腹は神経が集中しているため打たれると段違いで痛い。そのことをサクヤは先程の鞭で理解したのだ。

しかし體を丸くするということは背中をがら空きにしてしまうということ。

ビシイイイイイイン!!!

「んぎいいいいいい!!!!」

カコが振り下ろした鞭はサクヤの背中を捉え、赤黒い線狀の傷をまた一つ増やした。

(な、なんとか先輩を抑え込まないと! このままじゃ打たれ続けるだけだ!)サクヤは床に蹲ったまま目線だけを正面に向け、カコの足首を見た。

(足を摑んで倒してしまえば……)取っ組み合いになればもう鞭は使えない。そうすれば男である自分が有利だ。

サクヤはそう思い蹲った狀態から手を伸ばし、右手でカコの左足首を摑もうとした。

ダンッ!

しかし、甘かった。カコは読んでいたとばかりに左足に迫るサクヤの右手首を左足を上げてかわし、真下に來たその右手を踏み潰した。

(くっ!)ならば反対側、と思いサクヤは左手を伸ばした。しかしカコは同じ要領でサクヤの左手を自分の右足で踏み潰して止めた。

カコは完全にサクヤの動きを掌握していた。しかし仮に突然來たとしても、反応して同じ動きで止めることは出來た。

サクヤはこのルールの勝負の中では読み合いも反応も、カコに何一つ及ばない。

結局、サクヤは両手をカコの両足で踏まれた狀態となってしまった。

「あらあら、両手を抑えられちゃったわよ? これ、とってもピンチなんじゃないかしら?」

「!」

サクヤはようやく気づいた。打ち込まれると悶絶するほど痛いと先程身をもって教えられた脇腹を、曬しているということに。

(やめっ………!)サクヤがそう考える頃には、カコの體重の乗った鞭は脇腹をしっかりと捉えていた。

ビシャアアアアアアアアアン!!!!

「ふぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

さらに増幅した痛みがサクヤの體の中を暴れ回った。痛みが増したのは、先程までと違いカコが「當てる」ことではなく「鋭く痛く打ち込む」ことに集中しているから。

両手を取って押さえつけたことにより、カコは當てるために割いていた思考をサクヤに痛み

を與えることだけに100%使えているのだ。

(痛い!痛いいいいいいいいいいいい!!!!!)サクヤはドタバタと暴れ周り、痛みをなんとか紛らわせようとした。

しかし、これで終わりではない。先程までと違いまだ自分の両手はカコの足の裡の下にある。打ち込まれた脇腹を抑えて防禦する事は出來ない。

つまり、ズパアアアアアアアアアアン!!!!!

何度でも、脇腹への鞭が來るのだ。

「んむああああああああああああ!!!!」

「あはっ♡」

カコがそう可愛く笑ってからは、『地獄』の二文字。

サクヤが腕を引こうが押そうがカコの足の裡から逃れられない。つまりバンザイの狀態で完全に固定されて、鞭を持ったカコの前に無防備な脇腹を曬し続けることになったのだ。

左右の脇腹に鞭を交互に打ち込まれ続けた。

「あははっ!」

ヒュオン、ビシイイイイイイイイイイイイン!!!!

「んむおおおおおおおおおおおお!!!!」

「もう一発!」

ヒュオッ、スパアアアアアアアアアン!!!

「んぎいいいいいいいいいい!!!!」

「まだまだ!」

ビシイイイイイイイイイイン!!!!

「んぐううううううううううう!!!!」

「んふふ、楽しい~♡」

バシイイイイイイイイイイイン!!!

「むぎいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

サクヤは『逃げる』『守る』『降參』『戦う』、全ての選択肢を奪われたままカコと『勝負』させられ続けた。

「ほらほら、泣き叫んでるだけじゃ私に勝てないよ? なにかしないと!」

もう、サクヤに出來る『なにか』は無い。全ての選択肢を奪われたサクヤは、ひたすらカコの吐き出すサディズムを體に受け入れ続けるしかなかった。

猿轡をはめられ、さらに手を押さえられた今の體勢ではサクヤは許しを乞うことすら出來ない。ただ脇腹に激痛の鞭を打ち込まれ続け、まともに発聲できない絶叫をあげながら首だけを上に向けてカコを見る事しか出來ない。

真下から見ても、カコの顔はその大きな胸に遮られてほとんど見えなかった。その巨乳が一度右に揺れ、軌道を変えて左に揺れ始めるとそれに合わせて右から脇腹に鞭が來る。カコが上半身を捻りながら全體重を乗せて鞭を振るっているからだ。

サクヤはただただ揺れる巨乳と共に打ち込まれる鞭に泣き叫ぶことしか出來なかった。

地獄の時間はサクヤには永遠にも感じられ、カコが鞭を休めたのはサクヤの擦り切られた脇腹から滲み出た血でカコの鞭が染まったときだった。

「ふう……休憩しよっ」

カコはそう言うとサクヤが気が狂うほど暴れても退かしてもらえなかった足をヒョイと軽く上げ、キッチンの方へと歩いていった。

サクヤの顔は涙と鼻水、さらに猿轡の隙間から漏れた唾液でぐちゃぐちゃになっており、その表情はどれほど恐ろしい目に合ったかをよく表していた。

またサクヤの脇腹は大量に鞭を打ち込まれ、滲み出た血がフローリングの床に小さな水溜まりを作っ

ていた。

最後の方はサクヤの脇腹の皮は剝けて、露出した肉や神経を鞭で直接打ち込まれた。その無慘すぎる鞭傷はカコがどれほど殘酷なサディストかを表現していた。

(逃げ……ない、と……)サクヤの胸中にはもうそれしか無かった。カコから逃げたい。家に帰りたい。否、同じ町にいれば見つかってしまうかもしれない。この町から遠くにある実家に帰りたい。

ずり、ずり……

サクヤはフローリングに薄く血の跡を殘しながら、玄関を目指した。

(なんとか、立ち上がって……)サクヤは四つん這いまで起き上がり、腳に力を入れた。しかしスパアアアアアアアアアン!!!!

「!?、んぎいいいいいいいいいい!!!!」

背後にはキッチンで水を飲み終えたカコがいて、背中に鞭を打ち込まれた。

その激痛に意識を失いそうになるが、サクヤは最後の我慢だと思い、必死に立ち上がり玄関に向かって走った。

「あら」

カコは仕留めたと思った獲物が動いたことに驚き、その後を歩いて追いかけた。

(鍵がかかってる!早く、早く!)サクヤはドアの鍵を回し、ドアノブを摑みドアに體當たりするようにドアを開けようとした。この姿のまま飛び出せば、怪我の様子を見た誰かが通報してくれるかもしれない。

バンッ!

それは、ドアが勢いよく開いた音ではない。チェーンロックに阻まれて開かなかったドアにサクヤが衝突した音。

(しまった………)忘れていた。カコはドアにチェーンロックをかけていた。何故そのことを思い出さなかったのか。何故気づかなかったのか。

「あらあら。向こうで大人しくしていれば、降參させてあげようと思ったのに…」

カコはゆっくりとサクヤに近づき、扉を閉めて再び鍵をかけた。

「まだ私と『勝負』したいみたいね。いいわ、徹底的にしてあげる♡」

カコはピシン、ピシン、と鞭で左手の掌を叩いてリズムを刻む。

「んーー! んむーーー!!」

サクヤは首を何度も何度も左右に振り、あまつさえカコに向かって土下座した。

まともに向かっていっても勝てるわけがないのは最初の一分の打ち込みで理解した。カコの動きはサクヤでは捕まえることはまず不可能な上に、自分が打ち込まれる鞭も避けられないし防げない。

カコがこの時間を終わりにする以外にサクヤが助かる方法はない。

(許してください!許してください!)そう心の中で必死に念じて平伏し、縋るようにカコを見上げる。

その様子からカコがサクヤの意図を察せない訳はないのだが、サクヤにとっては殘念な事にその態度はサディストの背中をゾクゾクと擽るだけ。

土下座をして許しを乞う奴隷の背中に、容赦なく鞭を振り下ろす。サディストにとってこれほど楽しい一撃も無い。

ビシイイイイイイイイイン!!!!

「んむうううううううううううううう!!!!」

泣き叫ぶサクヤの顔の近くにカコは顔を近づけ、言った。

「サク。それほどにまであなたが私との勝負に拘るとは思

わなかったわ。いいわ、いつまでも付き合ってあげる♡」

ベロ……

そう言うとカコはサクヤの目尻に舌を伸ばし、溢れている涙を舐め取った。

そこからは『狩り』となった。部屋の中で逃げる獲物と追う猟師。どちらがどの役割かは言うまでもない。

部屋の中で走らせると面倒なので、立ち上がろうとすれば強めの鞭を打ち込んで四つん這いにさせる。

サクヤが猿轡を外そうと腕を上げれば素早く脇腹を打ち込んで動けなくして動作を中止させる。

床を這って泣き叫びながらカコから逃げるサクヤの背中に鞭を打ち込む。サクヤが身を守りながらうずくまれば、空いているところに鞭を打ち込み続ける。特に脇腹は少しでも隙があれば確実に打ち込まれた。そしてまた逃げ出せば追いかけて無防備な背中に鞭を打ち込む。

たまにカコが戱れにサクヤの背中を踏み潰してやると、両手両足にろくに力が入らないサクヤはカエルのように潰れてしまい腹を床に打ち付けられた。

そして鞭で皮が擦り切れるまで打ち込んでやった背中にカコが足の裡を乗せ、グリグリと傷口を踏み躙ってやると、それだけでサクヤはとてつもない激痛に襲われて泣き叫んだ。

そして踏みつけられて動けないサクヤに上から鞭の雨が降り注ぐ。

逃げようと必死に體をよじらせてもカコは太っている訳では無いが女性にしては上背があり、かつ胸と尻は大きく膨らんでいるため體重もある。そのためサクヤの華奢な體ではカコに上から踏みつけられたら逃げることは出來ない。

全身に鞭の激痛をたっぷりと浴びせられ、ある程度……と言ってもサクヤが何度か気絶するほど鞭を打ち込まれた後に、カコはわざと足をどけてサクヤを解放する。

解放されたサクヤはまたフラフラと起き上がり、四つん這いのままカコから必死に逃げる。

それをゆっくりと歩いて追いかけ、何度か鞭を打ち込んで痛みで動きを止めてからまた踏みつけて押さえ込み、上から鞭を何度も打ち込む。

サクヤが鞭の雨に耐えきれず、背中をカコの右足で踏みつけられて床に這いつくばったまま逃げようと両手を前に伸ばせば、それは地獄の始まりの合図だった。

前に伸ばした右手をカコに左足で素早く踏みつけられ、気づいて戻そうとした左手も右足で踏まれて押さえつけられた。

サクヤの右手にカコの左足。サクヤの左手にカコの右足。

つまり、脇腹を擦り切れるまで打ち込まれた體勢の再現だ。

カコは「あははっ! お馬鹿さん♡」と笑い、思い切り鞭を脇腹に打ち込んだ。

そこからは先程の地獄をもうワンセット。サクヤが泣き叫んで暴れ回ろうが、気絶しようが関係ない。カコは狂気の高笑いを上げながら、既に皮が無くなりつつあるサクヤの脇腹に鞭を打ち込み続けた。

先ほどと同じ回數を左右の脇腹に打ち込んで先程の激痛地獄をもう一度味わわせたカコは、ようやく両足をどけてやった。

サクヤは何秒か経過してからようやく自分が解放された事に気づいた。目の

前にはカコの足。視線を上げると、カコはサクヤの目の前にしゃがんでこちらをじっと見ている。

(なん、だ……?何かあるのか……?)カコは何も言わずに、ただ口元にだけ笑みを浮かべてこちらを見つめている。

カコがしゃがんでいるため、シャツの隙間からは大きな胸の谷間が見える。同級生が騒いでいたカコの巨乳はシャツ一枚の今は普段よりもさらに巨大に見えた。

さらに、ブラジャーをしていないのか乳首がハッキリと浮いて見えている。

カコは普段乳首が陥沒しているため、サクヤが家に入ってきた段階では浮いた乳首は見えなかった。

しかし激しく興奮したせいでピンと立った乳首が、シャツの生地を押してその存在を主張している。

カコの大きな谷間とハッキリと浮いた乳首、さらに口元に笑みを浮かべた妖艶な顔でサクヤを見下ろすその姿は非常に官能的であった。

しかし今のサクヤはそれを見て興奮をするどころか、恐怖を感じた。

何故ならハッキリと相手が自分をいたぶって興奮しているということを理解したからだ。性知識は淺いサクヤだが、カコの様子を見れば性的に興奮しているということは理解出來る。

(ダメだ、ここにいたら、また……鞭が、來る……!)「ぐ、うぐ、うううううー…………」

サクヤは既に枯れるほど出した涙をさらに流しながらなんとか全身に力を込め、四つん這いになりカコと反対を向いて逃げ始めた。

「あはっ♡」

カコの笑い聲が背後から聞こえた。

(ああ、くそ、そうだったのか……)カコの先程の目は、自分がまだ動くかどうかを見ていたのだ。ネコが死んだネズミで遊ばないのと同じ。獲物は動くから楽しいのだ。

先程のカコの期待するような目は『まだ遊べるか』を考え、待っていたのだ。

そして、自分は動いてしまった。つまり……

「ほぉら、まだまだ痛いのが來るよ~?」

ビシイイイイイイイイイイイン!!!!!

「んむぎいいいいいいいいいいいい!!!」

カコは今からまた、自分をいたぶって遊び始める。

その後もサクヤは散々鞭を打ち込まれ、完全に気絶して動かなくなったところでこの『勝負』は終わることになった。

「ふう、どうだったかしら?私との『勝負』は」

カコはサクヤの全身を餘すところなく鞭で舐め回した。

勝負など名ばかりで、その実態は一方的な蹂躙。サクヤは猿轡により降伏する権利すら奪われたまま、カコの鞭で一方的に嫐り盡くされた。

「あ、う、ごほっ! あ、ああああ……」

完全に気絶していたサクヤは、猿轡として口から後頭部に固く結ばれたタオルを意識の戻らない間にカコの手で解いてもらっていた。

カコはサクヤが目覚めるのを椅子に座り読書をして待っていたらしく、起きたと同時に聲をかけた。

サクヤは意識を失う前のことを思い出し、全身を震わせ恐怖に引き攣った表情でカコを見上げた。

カコが恐ろしい。

サクヤが恐れた理由は二つ。

まずはカコの鞭さばき。幼い頃か

ら大學まで慣れ親しんできた剣道の型を鞭に応用し、さらに今まで男を鞭で調教してきた経験も加わったことで、その動きは達人の域に至っていた。

そしてもう一つはそのサディズム。カコから見れば圧倒的弱者である自分を、心底楽しそうに打ち続けた。

泣き叫ぼうが土下座して許しを乞おうが、むしろその姿を見て興奮を加速させながら鞭を振るい続けた。

サクヤにとっては、自分がいたぶられている時に見えた、ピンと張ってシャツから浮き上がったカコの乳首でさえもが恐怖の対象となった。

何故ならその勃起した乳首こそが性的興奮の証であり、カコが自分のような弱者を鞭で打ち據えて痛がらせ泣かせることに悅びを覚えるサディストであることの証明だったからだ。

(この人は本當にSなんだ……いや、違う、ドS!最悪のドS女だ!)「さて、どうする?」

「へ?」

カコが突然サクヤに尋ねると、サクヤはキョトンとした顔で聞き返した。

「勝負。あなたが『降參』って言わないまま終わっちゃったじゃない」

降參と言わせないまま気絶するまで打ち込んだのは自分のくせに、という反発もサクヤの頭に浮かんだが、そんな考えはカコへの恐怖が一瞬でかき消した。

「………あ、え、その、降參です! さっきは気絶しちゃって、その……」

「うーん、あなたが最後まで降參しないまま場が収まっちゃったから、さっきのは勝負としては引き分けかしら?」

「え、ひき、わけ……? それだと、どうなるの、ですか……」

「それは當然……」

カコは口の端を上げてニヤリと笑うと、機の上に置いてある鞭の柄を摑み取り、その先端をサクヤの鼻先に突きつけた。

「最初からやり直し……かしら♡ ほら、立って構えなさい」

サクヤは一瞬、何も考えられなくなった。

カコの『最初からやりなおし』という言葉は、それほどまで強くサクヤの頭に衝撃を與えた。

(あの、地獄を……? さい、しょ、から……?)一瞬で打ち據えられ、抑えつけられ、動きを止められてから延々と鞭を打ち込まれ続ける。その地獄を最初から。

「ゆ、許してください! カコ様! それだけは! それだけは!」

サクヤは泣きながら土下座し、カコに頭を下げた。

「私が『構えなさい』と言ったのよ?」

「!」

そう言ったカコの表情には、サクヤを服従させるに十分すぎる威圧感があった。サクヤは「ああ、ああああ……」と情けなく震え聲をあげながら立ち上がり、やったこともないボクシングのような構えを取った。

それはカコと戦うための動きではなく、少しでもカコの機嫌を損ねないために頭の中にあった『構え』を適當に再現したに過ぎない。その姿は餘りにも弱々しく、半端に構えていることが一層の悲壯感とみっともなさを醸し出していた。

「じゃあ、始めましょうか♡」

そう言って鞭を體の中央に構えるカコからは剣の達人のような雰囲気と、その美しく妖艶な深い色の眼が放つ色気と、浮いた

乳首や唇をペロリと舐める仕草から伝わる興奮狀態の女性が流すフェロモンの混じった、カコの強い『気』が溢れていた。

「か、カコ様! こうさんです!降參ですううううううぅ!!!」

そのカコの気は向かい合っただけでサクヤを制圧してしまうほどの濃度であり、戦わずしてサクヤの心は敗北を認めてしまった。

一度は構えたものの、先程の恐怖の記憶がすぐさまカコに土下座して降參を申し入れる以外の選択肢を奪った。

「えー、つまんないの。男の子でしょう?悔しくないの?」

そう言ったカコではあるが、こうなることなど予想済み。

サクヤの心の中にある「女であるカコになら勝てるだろう」「結局は男である自分の方が強いはず」という気持ちは、実力差を強く見せつけた上で念入りに痛めつけることにより全てへし折った。

カコは奴隷にこれを『洗禮』と説明するが、心の中では自分への反抗心・奴隷の自尊心を根こそぎ奪うという意味で『牙抜き』と呼んでいた。

女主人に歯向かおうとする愚かなオス犬の牙は、女主人に押さえつけられてペンチを口の中に捩じ込まれ、全て引き抜かれた。

オス犬がいくら泣き叫ぼうともその牙抜きの儀式は粛々と行われ、女主人はオス犬が歯向かう為の牙を抜くという目的を果たしながら、その過程で満たされるサディズムを満足に味わった。

もうこのオス犬は自分に噛み付くことが出來ない。歯莖と舌だけが殘った哀れな口で、女主人の御機嫌を損なわないようにペロペロと舐めることしか出來ない。

(『牙抜き』も終わったし、次は舌の具合を確かめようかしら♡)カコはペロリと舌を出して唇を舐めた後、土下座しているサクヤに話し始めた。

「あのさぁ、『降參』って本當に思ってる?」

「はひ……?」

サクヤは意味がわからない。何故なら本當に降參であると心から思いながら土下座しているからだ。

「だってさ、あなたが降參っていくら言っても、私に心から負けたって認めているかは分かんないじゃん」

「そ、そんなことは! そんなことはありません!本當に降參です!」

サクヤは必死だった。カコに「もう一度戦いましょう」とでも言われると思ったからだ。カコとは二度と戦いたくない。二度とカコを怒らせたくない。

その気持ちがサクヤの中を埋め盡くしており、心の底からカコに降參していた。

「ふぅん。でも、あなたがなんて言おうと、これってやっぱり水掛け論だよね。何か証明させないと」

「しょ、しょうめい?」

「そう。あなたが本當に私に負けを認めたかどうかを調べるの」

「ど、どうやって……?」

サクヤはとにかくカコが恐ろしかった。わざとらしく「うーん、どうしようかな?」と悩んでいる素振りを見せながら部屋の中を歩くカコの、一挙手一投足が恐ろしい。

今にもその手の鞭が自分に向かうのではないか、とカコが歩き床を踏んで音がする度にビクリと體を震わせてしまう。

「そうね、これならどうかし

ら?究極の降參方法よ。これが出來たら本當に降參してるって証明として受け取ってあげるわ」

「ほ、本當ですか……い、いったいどんな……?」

サクヤはカコの提案に一縷の望みを見た。一方的な蹂躙になるとわかり切っているカコとの『勝負』以外の方法なら何でも良い。

「簡単よ。あなたが降參ですって言いながら私のお尻の穴を舐めるの」

「……は? え? お、おしりの、あな?」

サクヤは困惑した。てっきり何かしらの謝罪方法や、そうでなければまた契約書のようなものを提示されるのだと思っていたからだ。

カコは鞭を機の上に置き、機に向かって両手を付くと、サクヤの方に振り向いた。

「私がここでこうしているから、私の短パンとパンツを下げてお尻の穴を舐めなさい。英語でよくあるでしょ?『Lick my ass!』ってやつよ」

サクヤはカコの発音の綺麗さから、彼女が海外の學會によく行って英語で発表したりしているという話を、カコについてよく噂している同級生達から聞いたのを思い出した。

「簡単でしょう?舐めさせる方が勝者、舐める方が敗者。誰が見ても上下関係がわかる良い方法だと思わない? それか……もう一度勝負するという方法もあるけど?」

「あ、あ、あ……や、やります! やらせて、いただきます……!」

サクヤは『勝負』だけは嫌だという強い気持ちから、屈辱的過ぎるカコの申し出を受けてしまった。

「う、うう………」

生まれて初めて女性のお尻に手を觸れる。その緊張と、相手がカコであるという恐怖から、サクヤの手の震えは止まらなかった。

しかしこちらを見下ろすカコと目が合ってしまい、震えが止まるのを待っている時間はないことを理解した。

ゆっくりとカコの腰に手をかけ、短パンを摑んで足首まで下ろした。

「うわ……わあ………」

それは驚きに、サクヤのオスとしての喜びも混じった聲だった。真紅のパンツに包まれたカコの尻は大きく、しかし決してだらしなく垂れているわけでもなく、理想的な形と呼ぶことができる上、巨乳と同様に巨尻と表現しても差し支えないと思われた。

また、母親以外の女性の下著を見たのも生まれて初めてだった。

「早くしなさい」

自分の尻や胸を見て驚いたり喜んだりする奴隷はカコにとって珍しいものではない。カコはいつも通りと言わんばかりの顔でサクヤを急がせた。

サクヤは「はい」と返事をし、次はカコのパンツに手をかけて下げ始めた。

「わあ………」

一瞬、カコへの恐怖を忘れるほどの衝撃だった。真紅のパンツの下にあったのはマシュマロのような純白のヒップ。

サクヤはカコの美しいヒップに見惚れていたが、上からカコの視線を感じ慌てて我に返った。

「両手でお尻を摑んで広げてみなさい」

「は、はい……」

ムニュ……

「う……!」

サクヤはカコの尻に觸れた瞬間手の中に広がる心地良さにより貞操帯の中で自身の男性器が膨らむのを感じたが、膨

張は貞操帯により強制的にストップさせられてしまい、鈍い痛さが股間を襲った。

しかし見下すようなカコの視線は「そんなことは関係ないでしょ」と言外にサクヤに伝え、サクヤは両手に力を込めてヒップを左右に広げた。

「うっ……!?」

突然、吐き気に襲われた。何故ならヒップの狹間から姿を現したカコの肛門は、プンとサクヤの鼻を突くような便臭を放っていたからだ。

入浴後、ないしきちんとウォシュレットで洗浄した後以外、つまり大便の後にペーパーで拭いただけの肛門からは、普通はこのような臭いが漂うものだ。

カコは「あら、やっぱり臭いかしら?」と言った後、何の気もないように言葉を続けた。

「大學だとウォシュレットがあるからちゃんと綺麗に出來るんだけどね。この部屋のトイレにはウォシュレットがないの。さっき大きい方をした後ペーパーで拭いただけだから、多分ちゃんと綺麗に出來ていないのよね」

「う、うう……」

サクヤはカコの言葉を聞きながら、臭いに耐えつつ小さな呻き聲を漏らした。カコがこの流れで許してくれるとは思っていないが、自分が舐めるのであればせめて入浴後か徹底的にウォシュレットを使用した後が良かった。

「私、お尻の穴が敏感なのよ。だからなるべくペーパーで強く拭いたりしたくないの」

カコはそう話したあと、最後に「まあ」と付け加え、「これからはもう、そんな心配はないんだけどね……♡」

と言ってクスクスと笑った。

「……?」

カコは不思議そうな顔をするサクヤにそれ以上は説明しなかった。

「とりあえず、やってもらいましょうか」

サクヤはカコにそう命令され、両手でカコのヒップを広げたまま小さく俯き、「はい……」と返事をした。

(うう、うう……)サクヤがカコの肛門を見ると、ヒップの白さからは想像出來ないほど茶色く濁った円の中心に、ピンク色の割れ目があった。

汚らしく周囲に薄い毛が生えており、その肛門はカコの顔やスタイルの綺麗さからは想像出來ないほどグロテスクな部分だった。

「………! ………ン……!」

サクヤはなるべく見ないように固く目を瞑りながら、舌を必死に伸ばしてカコの肛門に舌先を近づけた。

ペト……

「ッ!? ゲホッ! ゲホッ! おえ、おえええ!!」

サクヤは舌先が肛門に觸れた瞬間、広がった強い苦味に耐えきれず舌を離した上、顔を床に向けて咳き込んでしまった。

「サク」

「はい……?」

名前を呼ばれたサクヤが上を向いた時には、既に高速で動く黒い線が自分に向かってきていた。

ビシイイイイイイイイイイン!!!!

「うぎゃああああああああぁぁぁあ!!!!」

サクヤの背中に、赤い鞭傷が一つ増えた。

「私は『舐めなさい』と命じたわ。でも勝手に舌を離して咳をしても良いって言ったかしら?」

「い、いっで、まぜん……!」

サクヤは背中の激痛に身をよじりながら、カコの問いに答えた。

「そうね。あなたが私の命令

を無視して勝手をすると、今みたいに痛みが與えられることになるわ。覚えておきなさい」

「はい………わかり、ました……!」

先程は『勝負』と稱し一方的に鞭を打ち込んで実力差と上下関係、女王様の恐怖を教えた。そして今回は命令違反に対する罰を教えた。

このように鞭を重ねてゆき、理想の奴隷を作るのだ。

カコの調教には他のS女と比較して圧倒的に鞭が多い。何故ならカコは鞭打ちが大好きだからだ。

自分の卓越した技術で無力化した奴隷に一方的に打ち込むのは楽しい。防具など付けていない裸の奴隷に何回も鞭を打ち込んで泣き叫ばせるのも楽しい。

調教や躾は飴と鞭が重要と言うが、カコの場合は99%以上が鞭だ。

自分は飴を舐めながら奴隷に鞭を打ち込むのがカコのスタイル。圧倒的な女王様による絶対王政の恐怖政治がカコの奴隷調教だ。

S女に弱みを握られ強制的にM役をさせられてしまう男は世の中に何人もいるが、サクヤはその中でも酷い相手に當たってしまった。

ひたすら鞭を打ち込まれる上、カコが今後サクヤに強制する行為のおぞましさは世のS女達の中でも常軌を逸している。

「あう、う、うう……」

サクヤは何とか再び舌をカコの肛門に伸ばした。

ペトッ……

(ううっ!!)舌先に広がる強い苦味。しかしもう逃げることは出來ない。

レロ………

目を固く瞑り嫌な味に耐えながら、サクヤは舌を下から上に動かした。

「うぇ……」

先程と違い、舌を當てただけでなく肛門を「舐めた」ため、サクヤの舌には先程よりもはっきりとカコの肛門の味が殘った。カコの肛門は強い苦味と、舌を刺激するピリピリとした味がした。

「ん……」

カコは小さな聲を漏らし、肛門でサクヤの舌を味わった。そして先程のように中斷されないよう、念を入れた。

「続けなさい。勝手にやめたら……わかってるよね?」

サクヤが舌を出したままカコの顔を見上げると、カコはニコニコと笑っていた。

男を鞭で滅多打ちにしたあと、肛門を舐めさせて笑っている女。カコが普通のサディストではないということをサクヤは既に理解していた。

「うぅ、オェ、うぷ、うぶうううぅぅ……」

レロ、レロ、レロ………

サクヤはカコの肛門の味と臭いに吐き気を催しながら、必死に舌先を肛門に這わせた。

「サク」

「は、はい!」

サクヤはカコに呼ばれ、慌てて返事をした。また打たれるのかと體を強ばらせたが、鞭の代わりに降ってきたのは冷たい言葉だった。

「私は『舐めろ』と言ったの。舌先を當てろとは言っていないわ。舌全體を使ってしっかりと舐めなさい」

「は、はい。分かりました」

サクヤは舌全體を肛門に當てるという苦しみを課されたことに悶えるよりも、鞭が來なかったことに安心した。

しかし、続けざまのカコの言葉に恐怖する事になる。

「あと。ちゃんと舐めるのもそうだけど、あなたはまた私と『勝負』がしたいようね。ただ舐めてるだけで全然『降

參』していないじゃない」

「あ、あああ! ごめ、ごめんなさい! ぜんぶ、ちゃんとやりますから、しょ、勝負は、もう!」

「さっきも言ったでしょ。あなたがきちんとお尻の穴を舐めながら私に降參ですって伝えられたらおしまいだし、伝わらなかったら再度『勝負』ね♡」

「あああ、はい! はい!伝えます! きちんと、舐めながら、降參します!」

サクヤは必死だった。とにかく『勝負』をする流れにはしたくない。勝負さえ避けられるのであればどんな命令でも聞いてしまうほどに、カコの鞭で心を折られてしまっていた。

「う、うう、う……」

肛門を舐めるのはきつい味や臭いに責め立てられる上に、屈辱的。サクヤも強い屈辱を感じてはいるが、それよりもカコに対する恐怖の方が大きかった。

「こ、降參です……」

サクヤはそう言ってから、口を大きく開けて舌を出し、カコの肛門が中心に來るようにして舌全體で舐め始めた。

ペロ、ペロペロ、ペロペロ……

「あら、降參は一回だけ? それに言葉も『降參です』だけ? きちんと考えて、色んな言葉を盡くして降參って伝えないと、私、あなたはもう一回勝負したいのかなって思っちゃうよ?」

「あう、あ、ご、ごめんなさい!」

カコに言われ、サクヤは頭の中を必死に回して言葉を考えた。

「こ、降參です……」

ペロペロ、レロレロ……

サクヤは肛門を舐めながら言葉を考え、話しながらもなるべく肛門舐めを中斷しないように、カコに対する降參の言葉を盡くした。

「僕は、カコ様に勝てません……完全に負けてしまいました……うぷっ……」

ペロ、ペロペロ、レロレロレロ……

「カコ様とは、二度と、戦いたくないです……」

ペロペロ、レロレロ……

「二度と、歯向かいませんから……もう、許してください……」

ペロペロ、ペロペロ……

「カコ様には、絶対に、服従しますから……もう、許してください……」

ペロペロ……レロレロレロ……

敗者が勝者の肛門を舐めて許しを乞う。これ以上ないほど絶対的な敗北と服従の証明。サクヤの哀れな姿は完全な敗者を體現していた。

「ふふ、うふふふふ♡」

そして、完全な敗者がいるということは、同時に完全な勝者がいる。

(やっぱり、牙抜きの鞭打ちで楽しんだシメはこれが一番ね♡)カコは泣いて許しを乞いながら自分の肛門を舐める哀れな奴隷を上から見下ろすのが大好きだった。

牙を引き抜かれたオス犬が女主人の肛門を舐めるその姿は負け犬そのもの。

たったの數時間で女主人によりプライドを潰され牙をペンチで引き抜かれたオス犬は、口の中に唯一殘された舌で女主人の肛門を泣きながら舐める哀れな負け犬となった。

(あと、この子は多分……)カコはさらに楽しむため、小さな期待をしながらサクヤに質問した。

「あなた、女の子とキスしたことある?」

「へ? あ、えと、その、ありません!」

サクヤには突然の質問の意図が分からなかったが

、とりあえず正直に答えた。

「へぇ、それなら私がもらってあげるわ。あなたのファーストキス。ほら、キスしなさい」

「へ……? えっと、あの……わ、分かりました」

サクヤにとっては想定外の話。しかしカコの命令に逆らう事は出來ない。さらに、こんな目にあった後でもカコほどの美人と初めてのキスをさせて貰えると思えばサクヤは嬉しかった。

「よい、しょ……」

サクヤはカコの唇にキスをするため、立ち上がろうと腳に力を入れた。しかし、パァンッ!!!!

「ウブウッ!!!」

完全に立ち上がる前にカコの平手打ちがサクヤの頬を捉えた。

長年剣道を続けてきたカコの手首の強さは計り知れず、そのビンタはサクヤが今まで頬に受けた衝撃の中で間違いなく最も強いものであった。

「うう、うぶ、な、なんで……?」

サクヤは左頬にカコの手と同じ大きさの紅葉(もみじ)がハッキリと殘った顔で、あまりの痛みに涙を滲ませながらカコに聞いた。

「覚えておきなさい。今後、奴隷であるあなたと女王である私が『キス』をする時は、あなたの唇と私の肛門とで行うのよ」

「あう、う、わかり、ました……」

カコはそれ以上説明しなかったが、これには理由があった。

その理由とは、最も衛生に気を遣われるべき『口』で最も汚く不潔な部分である『肛門』にキスをさせることで身分の差を強く実感でき、カコが気持ち良いから。

基本的にこれから行われること、強いられることの全てはカコの快楽のためである。それにより奴隷がどのような目に遭い、心身問わずどのような傷を負うかなど、カコにはどうでも良いことであった。

「じゃあ、受け取ってあげるわ。あなたのファーストキスを、私のお尻の穴でね♡」

「……う、ううう……」

サクヤに戀愛経験はない。それどころか、今までの人生はこの大學に入るための必死の勉強に費やしてきた。

その可愛らしい容姿から女子にそれなりの人気はあったが、サクヤは女子に告白されても勉強を理由に斷ってきた。

しかし戀愛経験が無いことを恥じることはなく、自分はまだどの女子とも関係を持っていない清らかな存在であると考えてその「純情」を守ってきた。

その純情の象徴こそがファーストキス。しかし、サクヤの唇に宿ったその純情は……

「うふふ、あなたのファーストキス……しっかりと私が受け取ってあげる。私のお・し・り・の・あ・な・で♡」

「は、はい、はいぃ………」

今宵、悪魔のような女の肛門に喰われるのだ。

サクヤは再びカコの尻を左右に広げ、肛門を見た。今からここに、ファーストキスを捧げるのだ。

あまりにも汚い、カコの肛門。茶色く薄汚れた円の中心で待ち構えるピンクの割れ目はサクヤの唇を待ちわびるかのようにヒクヒクと動いている。

その動きは涎を垂らして獲物を食す肉食動物と何ら変わらない。食慾の為に自分よりも弱い者の命を食う肉食獣と、性慾の為に自分よりも弱い者の純情を食

い散らかすS女。本質的にこれらは同じ思考。

「う、うう、ううう……!」

サクヤは固く目を瞑り、唇を突き出して少しずつ顔を前に出していった。

チュッ!

「あはっ♡」

たった今、サクヤのファーストキスは無くなった。サクヤのファーストキスはカコの肛門に飲み込まれて消えたのだ。

「じゃ、降參の続きね♡ 私のお尻の穴を舐めて、吸いながら降參の言葉を盡くしなさい。私に思いが伝わるようにね♡」

「わ、分かりました……」

サクヤは一度口を離して少し考えた後、屈辱的過ぎる『降參』を再開した。

「僕は…カコ様には一生勝てません……降參ですぅ……」

レロレロ、ぴちゃ、ぴちゃ、ちゅううう……

肛門を舐め回し、吸う。

「僕は、永遠にカコ様とは勝負になりません……」

ペロペロ、ちゅ、ちゃううう…!

「僕は、絶対に勝てません……もう戦えません……」

レロレロレロ、チュッ! ぺろぺろ……

「僕は、負け犬です……許してください……」

この殘酷な『降參』は延々と続いた。そしてカコはサクヤの言葉が盡きて舌が攣るほど肛門を舐めさせた後、ようやく赦しを出した。

「ん、もういいわ。あなたが降參だって気持ちは伝わった」

「ほ、ホントウ、です……か……?」

ニチャァ……

サクヤはカコの尻の谷間に顔の下半分をほとんど埋めた狀態で舐め続けながら降參の言葉を続けていたため、口元へ何本もの白い糸がカコの尻から繋がっていた。

あまりにも慘い鞭によるリンチと屈辱的過ぎる降參を強いられたせいで、サクヤの心は狂ってしまう寸前であったが、なんとか精神崩壊に至る前にカコはやめさせてくれた。

「ええ、本當よ。あなたが私に降參だってことと……」

カコはサクヤの髪の毛を摑み、無理やり上を向かせた。

そしてサクヤの顔を覗き込むように自分の顔を近づけた。サクヤはカコの美しい顔が自分の眼前に來たことにより、これほどの目に遭わされながらも、胸の鼓動が早くなるのを感じた。

「ペッ!」

ビチャッ!!

「うっ!」

近づいてきたカコの顔の口から、唾液が放たれてサクヤの眉間の少し上に當たった。

ドロ……

そしてサクヤの顔面に吐き捨てられたカコの唾液はそこから少しずつ下に垂れて目や鼻、口へと流れ、サクヤの顔全體をその汚れと臭いが侵食していった。

「あなたが、完全な負け犬だって事がね♡」

カコはそう言って機の上のティッシュを何枚か取り、肛門をゴシゴシと拭いたあと、そのティッシュをサクヤの口の中に詰めた。

サクヤは顔に唾を吐き捨てられたことにより、これまでの契約書、鞭、肛門舐めも重なりあまりの苦痛と屈辱により何も考えられなくなった。

軽い精神崩壊である。カコの調教は、カコのサディズムを満たすため奴隷の心にヒビが入るまで行われる。

「もういいわ。今日は楽しかった」

カコはそう言うとサクヤの荷物や服を摑んで玄関の方に歩いていき、玄関の扉を開け、その全てを外に

放り捨てた。

そして戻ってくると今度はサクヤ自身の髪を摑んで玄関まで引きずると、最後は足の裡をサクヤの背中に當て、そのまま外に蹴り出した。

「またね。おやすみ♡」

バタン、ガチャ、ガチャ!

內側からすぐに鍵がかけられる音がした。

慾望が満たされたカコにとってサクヤは用済みなので、家の外に捨てた。

あまりにも身勝手すぎるその仕打ち。アパートのドアの前で冷たい地面に裸で座り込むサクヤ。股間には貞操帯。顔には唾液。口の中には便のえぐみと臭みの殘るティッシュ。全身には鞭傷。

「あ……あ、あ、あ、あああああ!!」

何が悔しいのかも分からない。もう、自分の心がどうなったのかも分からない。

服を著て、悔し涙と喉から湧いてくる呻き聲を漏らしながら、サクヤは夜の道を走って帰路に就いた。

その夜、サクヤは泣き明かした。

下宿でシャワーを浴びると、全身の鞭の傷がひりひりと沁みて痛い。

しかしサクヤはシャワーを浴び続け、顔を何度も洗って口を濯ぎ続けた。最後に顔に吐きかけられたカコの唾液の臭いを、口の中に広がるカコの肛門の味を洗い流したい。

しかしどれほど繰り返しても落ちない。顔に殘った唾液特有の嫌な生臭さはサクヤの鼻腔の奧の奧まで入り込んだようで、唾液が皮膚に染みついてしまったのかとさえ思う。

どうしても、唾を吐く寸前にカコが見せたこちらを完全に見下した表情が脳に貼り付き消えない。吐く瞬間のカコの唇の形や色、飛んでくる唾液が含む泡の數までがくっきりと目に焼き付いてしまった。

舌に殘ったカコの肛門の味も同様である。苦味と刺激臭が舌と鼻にこびりついてしまった。

「あ、あ、あ、ああああああああぁぁぁ!!!」

泣いても、叫んでも消えることはない。鞭の痛みと、顔に吐かれた唾液の臭いと生溫さと、舐めさせられた肛門の味。

事実、サクヤの命が消える日までカコに奴隷にされたこの日の記憶は消えない。常に昨日のことのように思い出されるものとして、脳に保存されてしまった。

人間の脳は、とある要素と共に刷り込まれた記憶は消えにくくなる仕組みになっている。

その要素とは「痛覚」。強い痛みを伴った記憶は、それを繰り返さないために長期的な記憶として保存される性質があるのだ。

例えば、幼い頃にストーブやコンロで火傷した體験は、その後の人生において「火は危険」という教訓を體に殘すため、絶対に忘れないような記憶として脳に保存される。

今回、サクヤはこれまでの人生で経験したことがないほど壯絶な「痛み」をカコに鞭で味わわされた。

そしてその痛みと共に保存されたのは、『自分はカコの奴隷』という認識と『カコには勝てない』という敗北感。

奴隷としての誓約書にサインさせられた。

そしてあっさりと勝負に負かされた後、鞭をたっぷり打ち込まれた末に肛門を舐めさせられながら降參した。

最後には顔に唾液を吐き捨てられ、用済みと言わんばかりに

裸のまま深夜の部屋の外に蹴り出された。

これらの記憶は映像としてありありとサクヤの脳に保存され、もう消えることは無い。

今のサクヤは何が悔しいのか悲しいのかも分からないまま泣いているが、今後サクヤの記憶として殘るのは『自分は奴隷』『カコには勝てない』という絶対的な認識。

カコはこれらを計算した上でサクヤの調教を始めたのだ。

サクヤは今日カコに刻み込まれたトラウマとも言える忌まわしい記憶を死ぬまで忘れることができないように、瞼の裡に縫い付けられてしまったのだ。

ピンポーン……

朝7時30分。サクヤはカコの部屋の呼び鈴を鳴らした。

昨日の夜寢る前にスマートフォンを見ると、カコから2通のメッセージがあった。1通目は「明日7:30 私の部屋」とだけ、さらに次のメッセージには「明日、以下の物を持ってきなさい」とリストが付けられていた。

サクヤは行きたくなどなかったが、行かなければカンニング犯として告発されること、何よりまたカコに鞭を振るわれることを考えると、行かないという選択肢は頭から消え去った。

ガチャ「あら、ちゃんと來たのね」

ドアを開けたカコは昨日と同じ、Tシャツに短パンのラフな格好。部屋の中でブラを付けるのを嫌うのか、歩く度に胸が大きく揺れている。陥沒乳首は今は勃っていないため形を見せていない。

(昨日は………)自分を鞭打っているとき、肛門を舐めさせているとき、カコの乳首はピンと勃ちシャツを浮かせていた。

それはカコの興奮を表しており、また鞭を他人に打ち込んだり相手を屈服させたりすることで興奮する真性のサディストであることの証明だった。

サクヤは本來男子として興奮を覚えるはずのノーブラの巨乳女性の乳首にすら、恐怖を抱いていたのだ。

カコはサクヤに「いらっしゃい」と言って部屋に上げ、自分は椅子に座り腳を組むと、サクヤのことは床に正座させた。

そして昨日と同じように、二つのボトルがついた首輪も付けさせられた。

(う、うう、ううう……なんだ、これ……_)サクヤはカコに目の前に座られるだけで體が震え始めたことに疑問を覚えた。

今のカコは怒ってもおらず、また興奮してもいない。何より鞭を手に持っていない。ならば怯える必要はない……と、「頭では」考えている。

しかし、體は違う。鞭の痛みや唾液の臭い、肛門の味を體はまだ覚えており、サクヤの體はカコが視界に入るだけで、カコの聲を聞くだけで止めようもなく震え始めた。

「さて、今日からは私のために働いてもらうわ。休みは認めない。どれほど體調が悪くても、働けるかどうかは私が判斷する。あなたの體は完全に私が管理するから」

「は、はい………」

サクヤは震えた聲で返事をしてしまったが、カコの言葉は今ここでサクヤの全ての人権を否定するものに他ならなかった。

「言ったものは持ってきたかしら?」

「あ、は、はい。持ってきました」

サクヤがそう言っ

て自分のカバンを渡すと、カコは中身を全て確認した。

持って來るよう命じられたのは著替えや歯ブラシなど、サクヤが友人の家に泊まるために持參する物一式だった。

「ん。じゃああなたの家の鍵と財布、あとスマホを渡しなさい」

「へ……?」

サクヤはその質問の意味が分からなかった。しかし、カコに「早く」と言われると體が竦んで、すぐさま差し出してしまった。

「はい。じゃあこれは預かっておくから」

カコがそう言って機の引き出しを開けるとその中には小さな金庫が入っており、サクヤが渡した物はその中にしまわれてしまい、そのままガチャリと鍵をかけられた。

金庫の中には既に鍵らしきものが入っていたのが見えたが、サクヤはそれが何の鍵なのか分からなかった。

カコは金庫の鍵に長めの紐を通して結び、ネックレスのようにして自分の首にかけた。

それはカコの首元から重力に従って落ちていき、巨乳の谷間にすっぽりと収まった。

「金庫の中にはあなたの家の鍵と、財布、スマホ、あと貞操帯の鍵をしまっておくわ。財布には身分証明書がたくさん入っていたわね」

「あ……」

カコは「お馬鹿さん」と言わんばかりにクスリと笑った。

つまりサクヤは自身がカコから逃れるための手段、生命線とも言えるものを全て奪われてしまったのだ。

部屋の鍵、現金、學生証、運転免許証、保険証、スマートフォン。これらを全てカコに管理されてしまえば簡単に逃げ出すことは出來ない。

さらには貞操帯に阻まれ、自慰行為の権利さえも奪われている。

「周りの人に死んだと疑われないように、一日に一度だけ私があなたのスマホをチェックして適當に返信しておくから」

「あ、あの!」

「なぁに?」

「部屋の、鍵も、返してもらえないと……家に、帰れな、い……のです、けど……」

段々とか細くなるサクヤの発言に対し、カコは頭を抱えて「はぁ」とため息をついた。

「あなたは本當に愚かね。ここまでの狀況から自分の置かれた狀況が推察出來ないのかしら?」

「へ……? えっと…?」

まだ飲み込めない様子のサクヤにカコはもう一度ため息をついてから、サクヤにとって最悪以外の何物でもない宣告をした。

「あなたは今日から私に飼われるの。家には帰らなくて良いわ」

「そ、そん、な………!?」

サクヤは驚愕した。昨日、あれほど辛い目に遭わされたカコの調教を毎日受けさせられるに留まらず、この部屋で飼われて常にその恐怖に曬される。

「言ったでしょう。あなたの體は私が管理する。決定権はあなたには無い」

「え、えと、が、學校、は……?」

「今日から夏休みね。私達院生は研究で大學に行かなきゃならないけど、學部生のあなたは行く必要無いでしょ。だから8月、9月の2ヶ月間は私の部屋から一歩も出さないから」

「あ、あの、部活!部活があるので……」

サクヤは軽音楽部に入っていた。この夏休みは前期の練習の成果を発揮するイベン

トがある。それだけには何としても行かなければと考えた。

「退部、ね。これからは楽器の練習じゃなくて私に奉仕する練習をしなさい」

「そ、そんな! それだけは!」

あまりにも理不盡。楽しい大學生活の大半を佔める部活をここで辭めさせられるのだけは、嫌だ。

サクヤはそう思いカコに言い返してカコを見上げたが、自分を見下ろすカコの表情はあまりにも冷たく、サクヤの背中を凍らせた。

「関係ない。あなたは隷屬懇願書を書いたマゾヒストで、私の奴隷になりたいのでしょう?私はあなたの女王様役を『やってあげている』のよ?」

「あ、でも、それは……その、脅、されて……」

サクヤは諦めきれずカコに反論しようとするが、カコの手元にはサクヤが過酷な調教を望むとサインさせられた文書がある。

この口論の決著は初めからついていた。

「しつこい。あなたは今日から私に飼われる奴隷だということを……」

カコは機の上の鞭を手に取り、サクヤに振り下ろした。

ビシィ!!

「うぎいっ!」

「受け入れなさい。あなたがしてもいい返事はひとつ。『ありがとうございます、女王様』よ」

カコはそう言いながら鞭を上に大きく振り上げ、振り下ろした。

「ひっ……」

サクヤは咄嗟に両手で頭をガードする。

しかし、カコの鞭はサクヤを嘲笑うように庇われた頭を避けて脇腹に打ち込まれた。カコがスナップを効かせ、鞭の軌道を変えたのだ。

ビシイイイイィ!!!!

「うぎいいいいいいいい!!!!」

「ほら、なんて言うの?」

「ああ、あ、あ、ありがとう、ござい、ます……女王様……」

「はぁ、はぁ、はあ………」

サクヤは工具のドライバーを片手に何かを組み立てていた。

サクヤは先程、2枚の分厚い木の板と何本もの鉄の棒、さらに沢山の細かい金具を見せられた。

そしてカコの指示通りにそれらを組み立てさせられていた。何を作っているのかは分からない。

「手が止まってる」

ビシィ!!

「うぎいいいいい!!!」

カコは椅子に座ったり周りを歩いてサクヤに指示を出したりするだけで一切手伝わない。サクヤが聞き間違えたり、手を休めたりすれば鞭を入れるだけだ。

「うう、うううう………」

素材はひとつひとつがかなり重く、またこの手の作業の経験がほとんどないサクヤはミスを犯すことも多かった。しかしカコは一つ一つの作業に対しミスがあれば即座に鞭を振るう。

カコはたまに設計図のような物を見て考える素振りをするが、それをサクヤに見せることはない。あくまでサクヤには指示を出すだけである。

サクヤは何を作らされているのかも分からないまま作業を進め、背中の鞭傷を増やしていった。

(これは……もしかして……)完成に近づいてきてやっと、サクヤはそれが何なのかを理解し始めた。

恐らくこれは、檻。それも大型犬を入れるようなサイズの檻だ。

(なんだ……? カコ様は、犬か何かを……?)SMプレイの経験が

あるか、あるいはその方面の知識がある者なら、この檻が何を入れるためのものかすぐに理解するだろう。

しかし、昨日初めて「S女」というものを認識したばかりであってMでもなんでもないサクヤは、その意味を全く理解しないまま、カコの命令通りにその檻を完成させてしまった。

「最後に、金具のネジ穴のチェックをしなさい。ひとつも緩んでないか念入りに」

3時間以上一切の休憩なくサクヤが作業を続けた結果、それは完成した。

カコは途中で紅茶を淹れたりクッキーをつまんだりしていたが、サクヤは1秒たりとも手を止めることを許されなかった。

「ん……いい感じね」

カコは少し嬉しそうな笑みを浮かべながら、その完成した檻を觸ったり眺めたりした。

その檻は床と天井が長方形の厚い2枚の木板で出來ており、その2枚の板の間に無數の鉄格子がはめられている。

1ヶ所だけそこに入るものが通るための入口として扉があるが、その扉には外側から棒を通して南京錠をかけることが出來る鍵がついており、內側からは絶対に開けられないようになっている。

また、その入口以外に天井にも丸い穴が空いている。その穴はサッカーボール程の大きさであった。

「ん。私はこれから出かけるから。サク、ハウス」

「へ……?」

サクヤが意味も分からず固まっていると、カコは容赦なく鞭を振り下ろした。

ビシィ!!

「うぎいいいい!!!!」

「ハウス」

そして、再度靜かにそれを命令する。

「へ、あの、カコ様……?」

サクヤは何かを察したが、それを受け入れられなかった。まさか、そんなはずはないと思いたくてもう一度カコに質問しようとした。

しかし、質問の答えは言葉でなく鞭で返ってきた。

ビシイイイイィ!!!

「う、うぎいいいいいいいい!!!!!!」

「ハウス」

(い、いやだ、そんな……)サクヤは完全に理解した。何のためにこれを作らされたのか。そしてこれが誰の『ハウス』なのか。

サクヤはカコの命令を理解し、さらに身を守るための意味も込めて、速やかに先程作らされた檻の中に入っていった。

「ふふ。そうよ。今後ここがあなたの『ハウス』。私が出かける時と寢る時、あなたはこの中に入るの」

カコは話しながら、自分のうなじに手を伸ばして首からかけている紐を引いた。するとカコの巨乳の谷間から紐に繋がれたふたつの鍵が姿を現した。

ひとつはサクヤの全て……現金や身分証明書、スマートフォン、部屋の鍵、貞操帯の鍵を入れた金庫の鍵。

もう一つはこの檻の鍵。カコは鍵を手にし、サクヤが入った檻の扉を閉めて南京錠に鍵をかけた。

「じゃあ、良い子にしてるのよ」

カコはサクヤに背を向けて著替え、部屋から出ていった。

ガチャ、バタン!

玄関のドアが閉まり、カコが部屋から遠ざかっていく靴音がした。

「………え、うそ、え……?」

サクヤはまだ現実が受け入れられなかった。服は著させてもらえない。首輪、謎

の液體入りのボトル、貞操帯。自分の持っているものはこれだけ。

いつもは服を著て、財布とスマートフォンを攜帯しているのは當然。通學時であればリュックには教科書やノート、筆記用具。さらに移動用に自転車もある。

そして自由だった。どこに行ってもよく、何をするのも許されていた。本來、夏休みが始まったばかりの今日は自由を満吃しているはずだった。

しかし今はただ、この狹い檻の中に居ることしか出來ない。何も出來ない。自慰行為すらも出來ない。

自分のためにやれることと言えば、眠ることぐらいだろうか。

カコはサクヤが所有していた全ての『物』と『権利』を取り上げ、管理した。サクヤの全ての『自由』は鍵をかけられた。

カコは胸の谷間に挾んだ2つの鍵によりサクヤの全てを奪い、縛った。

愛の表明として「あなたは私のもの」と戀人に語りかける女性はいるだろう。しかしカコは文字通りサクヤを自分の『所有物』としたのだ。戀人や夫婦などとは全く次元が違う。

「いや、いやだ、そんな、奴隷……なんて………」

カコに対する恐怖のせいでこれまで勘や推測が働かなかったサクヤであるが、これから自分が2ヶ月どんな生活を送ることになるかは昨日と今日の仕打ちを思い出すだけで容易に想像出來た。

恐らく毎日鞭で打たれ、肛門を舐めさせられ、最悪なサディストであるカコの性慾の捌け口にされる。

実のところ今後サクヤがさせられるのはそれだけではなく、さらに悽慘な目に遭うことになるのだが、現時點の想像だけでもサクヤを絶望させるには十分な要素だった。

「嫌だ、出して、出して、嫌だ……ああああああああああ!!!」

サクヤは涙を流しながら鉄格子を叩いたり、入口の鍵に手を伸ばしたりしたが、やはり出來ることなど何一つなかった。

檻を組み立てる際に何か細工でもすれば良かった。しかしカコの見張りを掻い潛ってそんなことをする餘裕は無かった。

結局、自ら作らされた檻から出ることは絶対に出來ない。それは自分が一番分かっている。

ただ泣き叫び、暴れ回り、無為な體力消耗を繰り返すことしか出來なかった。

「う……う…………」

泣き疲れた後のサクヤに出來たのは、檻の中で橫になっていることだけだった。

檻の中で手足を伸ばして寢ることは出來ないが、體を曲げて橫になる面積はあった。

(何も、出來ない………)究極の退屈と、孤獨。

サクヤは如何に自分がスマートフォンやパソコン、テレビや漫畫に助けられているかを理解した。

一人でいる時に暇を潰すために出來ることは、これまでならいくらでもあった。しかし今、それらは全て許されない。

ただただ無為に時間が流れていくのを感じることしか出來ない。壁にかけられている時計の秒針が動いているのを見るくらいが精々だ。

「あ、ああ……あああ………」

仮に本の一冊でも手元にあれば、その本の世界へ一時的に逃避することができる。

しかし何も無い

今は、一切現実から目を逸らせない。

自分はカコに『飼われている』と強制的に自覚させられ続ける。檻の中で何もせずにカコの帰りを待つことしか出來ない。

この檻は、まるでサクヤにカコの聲で「あなたは私の奴隷」と語りかけ続けているかのようであった。

そして、二時間後。

文字にしてしまえば呆気ないが、サクヤにとっては永遠にも感じられる二時間だった。

懸命に眠ろうともしたが、檻の狹さと圧迫感、それと季節特有の蒸し暑さに耐えられず寢入ることは出來なかった。

結局、意識を保ったまま二時間ずっと絶望の時間を過ごさせられた。

ガチャ、ガチャ……バタン!

「ッ!!」

サクヤは玄関の方で響いた音に鋭く反応した。カコが帰ってきたのだ。

カコの帰宅はこれからカコの執拗な嫐りやいじめが始まること、もしくは労働を強いられることを意味する。しかし、今はそれらに対する恐怖よりも、この無間地獄のような檻から出られることの方が嬉しい。

カコの部屋の玄関ドアを開けてすぐ右手にはキッチン、左手にはユニットバスに続くドアがある。

そこを抜けると十二畳ほどの一人暮らしにしては少し広めのリビングルーム。サクヤの檻はこのリビングルームに置かれている。

リビングルームに入るには扉を開ける必要があり、サクヤはその扉を強く見つめてカコが入って來るのを待った。

ガチャ「あら、暑いわね」

ピッ……

カコの第一聲はそれで、すぐにエアコンのスイッチを入れた。

「か、カコ、様……!」

サクヤはすぐに「出してください」と発聲しようとしたが、乾き切った喉からは上手く聲が出ずに掠れてしまった。

「そうね、喉が乾いたよね。でも安心なさい。あなたが死なないように明日からは……」

サクヤの目に少しだけ希望の光が燈った。先程の行動から見て、カコが明日からは冷房を付けてくれると思ったからだ。

「これを付けてあげる」

カコはそう言うと、自信が持ってきた買い物袋から何かを取り出した。

それは30°ほどに折れ曲がった一本の筒の様なもので、途中によく分からない金具がついている。

「……?」

サクヤはそれが何なのか全く理解出來なかったが、カコは2ℓサイズの空のペットボトルを持ちキッチンで水を入れて帰ってきた。

そして水が入ったペットボトルの本來蓋をはめる部分に先程出した曲がった筒の様なものをはめ込み、金具を利用してそれを檻の鉄格子の一部に固定した。

サクヤから見れば、檻の內側に筒の先端。檻の外側に筒と繋がったペットボトルが口を下に向けて固定されている形になった。

サクヤから見える筒の先端は、金屬の玉のようなもので內側から蓋をされており、水が零れてくることはない。

「………?」

サクヤはますます意味が分からない。しかし、取り付けを終えたカコは満足気な顔で口を開いた。

「その玉を舐めてみなさい」

「………?」

サクヤは理解できないまま、言われた通りに舌を

出して筒の先端に見える玉を舐めてみた。

「うっ……?」

すると突然、サクヤの口の中に水が流れ込んできた。

「ふふ、それはペット用の給水器よ。そこを舐めれば水が出てくるわ。私、平日の晝間は最低でも8時から18時の10時間は家を開けるから。最近は暑いし、冷房がないときは水ぐらい飲めるようにしておかないとね」

このカコの言葉から、サクヤは二つの絶望を叩き込まれた。

まず、二時間でも檻の中で気が狂いそうになったのに、これから平日は毎日十時間ここに閉じ込められるのだということ。

そして、冷房はカコが家にいる時しか付けないということ。

つまり、自分は真夏の晝にこの部屋の中で水だけ飲みながら、眠ることも出來ず毎日十時間、カコを待つのだ。

「あ、あの! カコ様!水だけだと……」

そう。今年は気溫が高く、熱中症に関するニュースも立て続けに流れている。

熱中症を防ぐためには水分だけではなく塩分も重要。さらに直射日光を避ける必要もある。

カコはサクヤの僅かな言葉からその心配を読み取ったかのように返答した。

「安心なさい。この部屋のカーテンはかなり遮光出來るものになってるから日光は大丈夫。あと、飲み物は水だけじゃなくて別途『塩分』を追加してあげるわ。あと一応晝食も置いていってあげる」

「はぁ……」

サクヤは少なくともカコが自分を殺す気は無いということと、それなりの知識を持っていることに安心した。

カコは他に購入してきた色々な物を冷蔵庫やその他収納にしまった後、サクヤの檻の鍵を開けた。

「出ていいわよ」

「は、はい!!」

サクヤは檻から出して貰えたことに喜び、その瞬間はカコに感謝さえした。檻に閉じ込めたのも他ならぬカコ自身なのであるが。

(やった! やっと、やっと出られた……!)サクヤは檻を飛び出して、立ち上がろうとした。全身を伸ばすストレッチがしたかったのだ。

しかしスパァン!!!

「うぎぃ!!!」

カコは機の上に置いてあった鞭を素早く手に取り、立ち上がろうとしたサクヤの足を打ちサクヤを転ばせた。

「あなたの罪は二つ」

「………?」

「ひとつは私の許可を取らずに勝手な行動をしたこと。私の奴隷は必ず女王様である私に命令されたこと以外をするときは必ず許可を取りなさい。さっきの場合なら『カコ様、立ち上がっても良いですか』かしら」

カコは右手に持った鞭で自分の左手をパシリ、と軽く叩き言葉を続けた。

「もうひとつは立ち上がろうとしたこと。私の奴隷の頭は常に私の腰より下。立ち上がることは許さない」

「あが……う、うぐ……わかり、ました……」

立ち上がることが罪だということも、許可を取らなければならなかったことも知らなかった。

それでも突然、何の警告も無く打ち込まれた鞭。

たとえサクヤがそれが罪だと知らなかったとしても、カコが気に入らなければそれは罪であり、罰として鞭を打ち込まれるのだ。

この一

事からもいかにカコが絶対的な女王様としてサクヤの上に君臨しようとしてるかが分かる。

「ふぅ、それにしても最近は暑いわね。靴の中が蒸れちゃって大変」

サクヤは先程鞭を打ち込まれた場所から動かずに、とりあえずカコの前に正座していた。下手に動くとまた許可を取らなかったことで鞭が來ると思ったからだ。

「さて、あなたは今後私がここに帰ってきて檻から出してもらったら、すぐに『おかえりなさい』の儀式をしなさい」

「は、はい……?えと、お、おかえりなさい……」

「ふふっ、そうじゃないわ。言葉だけじゃなくて奴隷からの奉仕で女王様の帰宅に深い感謝を示すの」

「………? ……?」

サクヤはますます意味が分からない。一體、何をすれば良いのか。

「外を歩いたって事は主人の足が蒸れたって事でしょう? だから私の足の垢と汗を落とすのよ。あなたの舌でね♡」

「は……?舌、で………垢……?」

カコはそう言うと椅子に座り右足の靴下を脫いだ。そして床に座り込んで意味がわからないと言うふうに固まるサクヤの前に自分の右足を出した。

「舐めなさい。丁寧にね」

モワッ……

夏場に外を歩いたその足からは汗の蒸気が昇っていた。激しく蒸れたせいか汗の水滴が所々に付著している。

爪に赤いマニキュアが塗られて光沢を放っている指をカコが何度か開いたり閉じたり繰り返すと、指の隙間には垢と靴下の繊維が溜まっているのが見えた。

「あと、え、その………」

ビシィ!!!

「ひぎぃ!!!」

右肩に鋭い痛みが走る。カコが鞭を振り下ろしたのだ。

「サク、言ったでしょう。私の命令に対してあなたがしても良い返事は『はい』のみ。分かった?」

「は、はい…」

「じゃあ、舐めなさい。ただ舐めるだけじゃない。私の帰宅を喜ぶあなたの気持ちをたっぷりと込めて奉仕しなさい」

「は、はい……分かり、ました……」

(う、う、うう……)目の前に差し出された、蒸れた足。鼻を突く垢と汗の混じった刺激臭。白くて綺麗な肌と対象的な赤いマニキュアが映える美しい足だが、今は汚いという感情しか湧いてこない。

ペロ……

しかし、今のサクヤにはカコの鞭に逆らう気概を持つことなど出來ない。舌を出してカコの足に押し付け、舐め始めた。

レロ、レロレロ……

サクヤはとりあえず舐めやすい足の甲に舌を這わせ始めた。

ビシィ!!

「ふぎぃ!!!」

サクヤの背中に鞭が振り下ろされた。

「違う」

「は、はひ……?」

意味が分からない。舐めろと言われて舐めたのに何が違うというのか。

「舐め方が違う。私の足を舐めるときは舐める順序と舌の動かし方があるの」

「え……し、知りませんでした……」

ビシィン!!!

「うぎぃ!!!」

カコは先ほどよりも強く、背中に鞭を打ち込んだ。

「無知は罪。『知らない』から適當にやるのは愚か者のすることよ。まずどうやるかを聞くのが普通でしょう?」

「は、はい………」

あまりにも理不盡。それならばそのことも説明して欲しい。サクヤは背中の痛みに耐えながらそう思ったが、この部屋の中には通常の常識や倫理など存在しない。カコこそが法律なのだと思い知らされた。

「カコ様、どのように舐めれば良いですか……?」

「最初は汗が溜まっている指の股に舌を挿れて汗と垢を舐め取りなさい。その後は指を一本一本咥えてしゃぶって、最後に足の裡と甲を舐めなさい」

「わかり、ました……」

レロ……ヌチュ……

サクヤは言われた通りカコの足の親指と人差し指の間に舌を入れ、舐め始めた。

「ウッ……」

舌に広がるしょっぱさと苦さ、そして全身を震わせる屈辱感。

ヌチッ、ヌチュ、ヌチュ……

カコの足の指の間で何度も舌先を上下させる。しばらく親指と人差し指の間を舐め、味がしなくなってきたところでカコに「次」と言われたので、人差し指と中指の間に舌を入れて舐め始めた。

「ウェ、う、う、ううう……」

汚さと臭いに対する吐き気と、帰宅直後の蒸れた女の足を舐めさせられる屈辱でサクヤは泣き始めてしまった。

「クスクス……可愛い。今まではネットで見つけたM男のおじさん達を責めて発散してたけど、弱みを握った本物の『奴隷』は格別ね」

カコは喜んでいた。カコが言う通り、今まではインターネットでSM趣味の大人達に鞭を振るってきた。

本格的な調教をして欲しい、とSM未経験の男を一から鞭で奴隷にしたこともあるが相手は年上。

やはりカコが抱える「年下で小動物的な子を徹底的に調教したい」という衝動は解消されなかったのだ。

しかし、ここにきてようやくカコはサクヤという理想の奴隷を捕まえる事が出來た。

「うふふ。この二ヶ月、私の部屋から一歩も出さずに飼い慣らしてあげる♡」

「……ッ!」

サクヤは背筋が冷たくなった。

本気だ。本気でこの人は僕の事を『奴隷』にしたいんだ。

世の中に、そんな考えの女性が本當に居るなんて思いもしていなかった。

「サク、反対」

「あ……はい、分かりました」

サクヤはカコの右足の指の間を全て舐め終え、足の裡も甲も舐め終えた所でそう言われた。

「でも、その前に口の中を消毒ね」

「……?」

「首輪に付けてあるボトル。色が付いている方は口腔消毒液よ。それを口に含んで濯いで、飲みなさい」

「は、はい……」

このボトルはそういう意味だったのか、とサクヤは理解し言われた通りにした。

「ちなみに透明な方は肌に塗る消毒液。鞭傷が化膿しないように自分で塗りなさい。あなたがいくら傷を重ねようと私は打ち込むから、手當は自分でしなさい」

「はい……」

サクヤは今夜肌に消毒液を塗ろう、と考えてから口に色付きの液體を流し込んだ。

味は消毒液のそれであり、柑橘系の匂いが混ざっていた。

「消毒後、もう一度右足を舐めてからこのハンカチで拭きなさい。足だけじゃない。私に舐め奉仕した後は全てその『仕上げ』をしなさい」

「は、はい……」

サクヤは言われた通りにその消毒液で口を濯いでから飲み込み、カコの右足を舐めあげてから渡されたハンカチで拭いた。

そうするとカコの足は汗と垢の蒸れた匂いでもなくサクヤの唾液の匂いでもなく、柑橘系の仄かな香りが漂う狀態で終わった。

「うふふ、じゃあ左足もね」

サクヤはその後、左足も同じように舐め、『仕上げ』までさせられたのだった。

「じゃあ、少し遊びましょうか」

「遊び……?」

カコはサクヤに両足の垢と汗を全て舐め取らせて「おかえりなさい」の儀式をさせた後、言った。

「ええ、簡単なゲームよ。あなたの躾ゲーム。今から『おすわり』の躾をするわ」

「しつ、け……」

サクヤはカコに見えないよう少し顔を伏せた狀態で、嫌そうに眉を顰めた。

自分が本當に飼い犬のような扱いを受けていることに、少なからず屈辱を感じていたからだ。

「ゲームと言ってもルールは単純。私が『おすわり』と言ったらあなたがすぐにおすわりする。私が『よし』と言うまであなたは動いちゃダメ。すぐにおすわり出來なかったり、勝手に動いたりしたら……」

ピシンッ!

カコは機の上に置いてある鞭を右手に取り、自分の左手の掌を叩いて音を鳴らした。

「これよ♡ まあ、あなたが『躾』をすぐ體に刻み込む事が出來たら、そんなには叩かれないで済むからね」

カコはそう言いながらクスクスと笑った。歪む紅い唇は悪女めいて美しく、長いまつ毛に挾まれた瞳は殘酷な期待を宿しながら黒々と輝いている。

「………!」

また、あの鞭で打たれる。カコの笑いは失敗すれば何度でも何度でも打つという意味だ。サクヤは直ぐに理解し、恐怖と緊張を身に走らせた。

「じゃ、細かいルールの説明ね」

サクヤはカコの事を見上げながら、必死に説明を聞き取った。

ルールをは至ってシンプル。

最初は立ち上がり、両手を上に挙げた狀態でいなければならない。

カコが「おすわり」と言ったら即座に土下座の體勢にならなければならない。それも、両手の先をしっかりと合わせて丁寧に。

土下座の體勢のときに「よし」と言われたらまた立ち上がり、バンザイの姿勢に戻る。

基本の流れはこう。但し「おすわり」の姿勢の時に少しでも動いたら鞭が入る。おすわりの體勢は指先一つ、體を1mm震わせることさえも許されない。

「簡単でしょ?要するに私の號令に従ってバンザイと土下座を繰り返すだけよ」

「は、はい……」

サクヤは確かに簡単だと思い、少し安心した。

覚えられるはずもない複雑なルールを押し付けられて理不盡に鞭で打たれるようなゲームではなくて良かった、と思ったからだ。

「じゃあ、始めましょうか」

首輪から下げているボトルは取り外され、首輪と貞操帯のみの格好となったサクヤは、最初の姿勢であるバンザイの體勢を取っていた。

カコはその周囲を鞭を持ってグルグルと回るように歩く。目の前を通り過ぎる短パンに包まれた

丸く女性的な尻にどうしても目がいくものの、サクヤは雑念を払って耳に集中する。ほどなく、カコがそのまま口を開いた。

「おすわり」

ビシイイイイイイン!!!

「うぎゃああああああ!?」

サクヤは一瞬、何が起きたか分からなかった。

おすわり、と言われた瞬間に自分の脇腹に激痛が走ったのだ。

しかし、すぐにそこをカコに鞭で打たれたと分かった。

「はい、あなたの負け♡ 言ったよね? すぐにおすわりしなかったら鞭だって」

「かは、ケホッ……そんな………」

カコは言い終わるとほぼ同時に鞭を打ち込んできた。つまり、その隙はほんの一瞬しかないということだ。

「じゃあ初めから。バンザイしなさい」

サクヤは痛む脇腹を抑えながら立ち上がり、両手を挙げた。

カコは先程と同じようにサクヤの周囲を歩く。

「お」

「ッ!!」

カコが口を開いた瞬間、サクヤは土下座の體勢をとった。

(やった!間に合った!)ダン!

「っ………!?」

しかし突然、土下座の體勢で床に押し付けている両手の先に鈍い激痛を感じた。鞭とは別種のもの。

そして、カコに素早くそこを踏みつけられたのだとすぐに理解した。

舐め奉仕を強いられ、サクヤがカコより絶対的に下位であるのだと突きつけられた、その支配の象徴であったカコの右足が目の前にあって、しっかりと土下座したはずのサクヤの手を踏みつけている。

やや汗ばんだ溫かい足裡の感覚が手の甲に押し付けられる。

サクヤが混亂しているうちに、その手を踏んでいる右足にぐっと體重がかかったかと思う間もなく、今度は後頭部をいきなり押されてサクヤは顔を床に押し付けられる。カコの全體重が、サクヤの手と頭に乗った。

手を足で押さえられたまま、頭を踏みつけられたのだった。屈辱感ももちろんあるが、それ以上に混亂がサクヤの脳內を満たした。

「……あ、あの、カコ、様……?何を……?」

サクヤはたまらず質問した。

體重をかけられているため顔を上げてカコの表情を見ることは出來ないが、手と頭を踏まれて動きを封じられた狀況から、カコが鞭を打とうとしている気配は察せたからだ。

「私……『お』しか言ってないけど?」

「あ……! えと、それ、は………」

「うふふ。これはあなたの早とちり。つまりお手つきね。お手つきしちゃったあなたには……」

サクヤは全身がガタガタと震え、汗が吹き出してくるのを感じた。

「おしおきタイム♡」

カコが楽しそうにそう言うと、ヒュオンッ!と鞭の振り上げられる音がサクヤの耳に聞こえた。

ビシイイイイイイン!!! ビシャアアアアアアアン!!!!

「ギャアアアアアアアアアア!!!!」

サクヤの脇腹を左右から舐めるようにカコの鞭が舞った。サクヤは堪らず悲鳴を上げながら暴れ回ったが、しっかりと踏みしめられた両手と頭は寸分も動かせない。

唯一動かせる下半身も腳を伸ばすか畳むかぐらいの動きしか許されず、脇腹や背中を

ガードする事は出來ない。

結局、サクヤは合計10発の鞭をカコが打ちたい部分に好き放題打ち込まれた。

「ちゃんと『おすわり』と言うまで聞いてから動きなさい。それ以外で動いたらおしおきタイムだから」

「は、はい………」

サクヤは痛みにゼイゼイと息を切らしながら、再びバンザイの體勢を取らされた。聲がうるさい、という理由から猿ぐつわを付けられた後で。

「………おすわり」

「!」

カコがそう言うと、サクヤは即座に反応して土下座の體勢となった。

一度サクヤを土下座させるため、今回のカコには初めから鞭を振るうつもりがなかった。

しかし鞭が來ると思っていたサクヤは出來うる最高の速度で土下座の體勢をとった。

(やった!間に合った! ちゃんと『おすわり』と言い終えていたぞ!)「フゥ、フゥ……」

今度こそ成功したという事実に喜んだサクヤは、一瞬、緊張の糸を切ってしまい、大きく呼吸した。

ビシイイイイイイン!!!!

「ンムグウウウウウウウ!!!!」

背中に、鞭が振り下ろされた。

(そんな、どうして………!?)サクヤは意味がわからず、カコを見上げた。

バシイイイイイイン!!!!

「んぎいいいいいいいいぃ!」

しかし、カコを見上げた瞬間もう一発の鞭が背中に打ち込まれた。

「言ったでしょう?『動いちゃダメ』って。息をして背中を震わせるのもダメ。怖くて私を見上げるのもダメ。そして今みたいに怖さに震えるのも……」

ヒュオンッ!

痛みと鞭に対する恐怖で小刻みに體を震わせているサクヤの背中に向け、カコは笑いながら鞭を振り下ろした。快楽に満ちたその笑みはまるで悪魔のようで、しかし細めた目も歪んだ唇も、あまりに美しかった。

ビシャアアアアアアアン!!!!

「ダメ♡」

「ンムウウウウウウウウ!!!!」

サクヤは全身を駆け巡る痛みを何とか押さえ込み、體の動きを止めることに集中した。

「そうそう、集中しなさい。體の動きを止めること。『絶対に動かない』ことに全神経を使いなさい」

「─────────ッ」

サクヤはカコに言われた通り、とにかく體を靜止させることに集中した。

今までの人生、ここまで『動かない』ために努力したことはないほどだった。

サクヤが土下座の體勢で完全に動きを止め、3分ほど経ったところでカコは口を開いた。

「よし」

「…………ぷはぁ……」

サクヤはカコに聞かれないよう小さく呼吸を整え、再びバンザイの姿勢を取った。

「流れは理解したかしら? じゃあこのゲームを、夕飯の6時までやりましょうか。あと3時間ね」

「………!?」

瞬間、サクヤは絶望した。

(そんな……これを3時間?)この10分ほどの時間だけで限界まで神経をすり減らしている。それなのに、そんなに繰り返されて耐えられる訳がない。

「あら、長くないか? って言いたそうね。安心して。このゲーム、私は全然疲れないから♡」

そう。カコが考えたこの

『躾ゲーム』、號令を出す方は一切疲れる要素がない。

何故なら『おすわり』も『よし』もタイミングは自由。號令を連続で出しても良いし、出さなくても良い。そして出さないときは何をしていても良い。

つまりカコは読書やネットサーフィン、さらにはティータイム等で寛ぐ片手間にもこのゲームを楽しめるのだ。

そして相手がミスすれば、そのペナルティとして大好きな鞭打ちまでも自由に楽しめる。

カコにとってはリラックスとレクリエーションを兼ねた最高の時間を過ごせるのだ。

しかし、サクヤの側は地獄の時間。

まず、バンザイの體勢が辛い。腕を挙げ続けることはそれだけでもかなりの負擔となる。そうでありながら、カコが気まぐれに『おすわり』と言うまで腕を上げた狀態でいなければならないのだ。

加えて、カコの『おすわり』に対し一瞬で反応しなければならない。反応が少しでも遅れれば鞭を受けると思って間違いないだろう。

そして土下座の體勢。『體を全く動かさない』というのは無意識には出來ない。今しがたのサクヤが必死で取り組んでいたように、動かさないこと自體に意識を向け続けなければならない。

向こう3時間、サクヤは體力も神経もすり減らし続け、カコは何の苦もなくゆったりと楽しむのだ。

「おすわり」

ビュッ……!!

カコの言葉と同時に、鞭が迫る。

チッ!

そして、部屋の中に響いたのはカコの鞭がバンザイの體勢をしていたサクヤの脇腹が『あったところ』を通過し、土下座の體勢に移行する途中のサクヤの髪の毛を掠めた音。

「あら、なかなか早く『おすわり』出來るようになったわね」

「……………」

カコの言葉に喜ぶような素振りはなく、サクヤは土下座の體勢で固まっていた。サクヤは巖のようにピクリとも動かない。

しかしこれは眠っているわけではなく、全身の筋肉を『動かない』ことに注力しているからこそ出來る、全力の『靜止』。

「よし」

この瞬間だけ、僅かに脫力する。しかし気は抜かずにすぐにバンザイの體勢を取る。

現在時刻は17時50分。

サクヤは時計を背にした位置取りでこのゲームを始めさせられ、時計はカコだけに見えている。

そのため、サクヤは今が何時頃なのか全く分かっていない。もしかしたらまだ全然時間が経っていないかもしれない、という恐怖心もある。

「うふふふ。かなり私の『躾』が體に染み込んで來たようね。ま、ここまでやられると流石にね……?」

カコはバンザイの體勢で固まっているサクヤの背中に手を近づけた。

ヌチッ……

そして、その端で痛々しく血が滲んでいる鞭傷に人差し指を當て、その傷を抉るように指先を押し付けて血を掬いとった。

「うぐ、ウウウウウウ………!!」

サクヤの體は背中と脇腹を中心に鞭傷だらけになっていた。無事な部分の方が少なく、至るところに血が滲んでいる。

それはサクヤが如何に恐ろしく、痛く、悲慘な目に遭ったか、またカコが如

何に鞭を楽しんだかが一目で分かるような姿だった。

カコが強いた理不盡な『躾ゲーム』により、サクヤは全身にペナルティとしての鞭を受け続けたのだ。

カコは基本的には寛ぎながら、たまにサクヤの周りを歩いては『おすわり』という號令と同時に鞭を振るう。

大抵はこれが直撃し、サクヤは悲鳴を上げる。

そして土下座の體勢を取るサクヤの隣に椅子を持ってきてサクヤをじっくりと見張る。

サクヤはカコの視線を感じながら、少しでも動いたら鞭を振り下ろされるという緊張感に曬され続けるのだ。

しかしこの時、実はカコは常にサクヤを見つめていると言うわけではない。本を読んだり、スマートフォンを操作していることもある。

しかし土下座で下を向いているサクヤがそれを知ることは出來ず、1秒の隙もなくカコが自分を見張っていると感じ、悽まじいプレッシャーの中で體を固め続けるのだ。

カコの『よし』の號令を待ちわびながら必死に固まり続け、再びバンザイの體勢を取る。

そしてバンザイの體勢で固まっている時はカコの『おすわり』に対して神経を研ぎ澄まし続ける。

しかし途中でカコは號令を出しながらの読書やネットサーフィンに飽きたのか、「そろそろ鞭で楽しみたいな」と思い、『おすわり』ではなく『おしおき』と言ってみたりした。

するとサクヤはつい反応してしまい、土下座の體勢を取ってしまった。

サクヤは「あっ……!」と自分のミスに気づき慌てて上を見上げると、にんまりと笑ったカコが自分を見下ろしていた。

「そうかぁ……そんなに私の『おしおき』が欲しかったんだね♡」

と言ってサクヤの両手を踏みつけて押さえ込み、好き放題鞭を打ち込んだ。

最初のように10発だけではない。カコが好きな強さで、好きなだけ、好きな場所に打ち込み続けた。

體に殘された鞭傷のほとんどは、このようにカコの「お楽しみ」のために付けられたものであった。

カコが鞭で楽しみ終わった後、再び仕切り直してバンザイをさせられる時にサクヤがカコの豊満な胸をちらりと見ると、カコの乳首はピンと勃ち、その存在を主張していた。

これはカコの興奮のサイン。カコは押さえつけた獲物を一方的に鞭で嫐る事を楽しみながら、鞭を振るう度にシャツが乳首に擦れて僅かな刺激が來るのも快楽として味わっていた。

そしてその後も、神経をすり減らしながら必死に自分の言葉のひとつひとつに集中するサクヤを楽しみ続けた。

「ん……」

カコは指先に付いたサクヤの血を、血よりも紅い自分の舌で舐め取り味わった。

「こんなになるまで頑張ったんだもん♡ 良い反応……いや、反射になってきたね」

「は、はい……」

そう。カコが言う通り後半は「おすわり」の聲に反応してから土下座していたのではなく、聞こえた瞬間から勝手に體が動いていた。

現に、先程鞭をかわして土下座する事が出來たとき、サクヤは鞭の痛みと疲労で半ば気絶していた。

しかし

、體は動いた。カコの『おすわり』に対して脳ではなく脊髄が反応して體を動かしたのだ。

そして土下座の體勢で體を固めるのも、同じく無意識に出來るようになり始めていた。そしてカコの『よし』でその硬直も自然と解けるようになった。

これは完全に『反射』で、熱いものを觸ってしまった時に即座に手を離すのと同じ。體を守るために本人の意思とは関係なく動いているのだ。

「もう6時ね。ご飯にしましょうか」

「は、はい!」

サクヤは心から喜びの聲を上げた。

ようやくこの地獄のような時間が終わったのだ。思わず力が抜けて床に座り込んでしまった。

しかしゲームが終了した今、その様子をカコが咎めたり罰を與えたりすることはなく、彼女はそのまま冷蔵庫を開けた。

「今日は時間が無いと思ったからこんな物だけどね。お米も炊いてないし。あなたの分もあるからね」

カコはそう言いながら冷蔵庫からコンビニエンスストアで買ったパンやおにぎり、サンドイッチを取り出した。

「私はサンドイッチ。あなたはパンとおにぎりを食べていいわよ」

「ああ……ありがとうございます。ありがとうございます………」

サクヤはカコの見せてくれたパンとおにぎりに心から感謝していた。

地獄の『躾ゲーム』が終わったということを実感でき、さらにカコが少しながら優しい雰囲気に変わったことも嬉しかった。

「ただ、あなたは私の奴隷、ペットだから。私と同じように食べるんじゃなくて……」

カコはそう言うとキッチンの方に歩いていき、まだ袋に入っていた新品のガラスボウルを持ってきた。

「これが今後あなたが食事をする時に使う『お皿』よ。これ以外で食事は與えないからね」

カコはそう言うとパンとおにぎりの封を開け、ガラス製のボウルの中に入れた。

(ああ……なるほど……)サクヤはカコの言っている意味を理解した。今後、こうやって犬の餌のようにボウルに入れたものを食べさせられるのだ、ということを。

しかし、その予想は大きく大きく外れていた。

「でも、あなたがお腹を壊しちゃいけないから、食べ物は柔らかくしてあげるわ」

突然カコがそう言って短パンとパンツも脫いだのだ。白く長く、均整の取れた肉付きをした腳線美。そして太腿のさらに上には、黒々とした茂み。女性のそこが露わになっているということをサクヤに知らしめる。

「へっ……?」

驚いているサクヤに特に何も言うことなく、カコはそのままボウルに跨った。文句無しの美女であるカコが露わになった股間を突き出しているという、他のシチュエーションであれば男にとって夢のような狀況であるが、下に置かれているのはサクヤの今夜の夕食である。

ショオオオオオ…………!

そして力を抜き、股間から薄黃色い液體を勢いよく零し始めた。

「~♪」

「ッ……………!?!?」

あまりの出來事を前に動けないサクヤをよそに、カコは鼻歌を鳴らしながらサクヤの食べ物を入れ

たボウルに向けて放尿を続けた。

先にボウルに入れられていた哀れなパンとおにぎりはカコの尿を吸収して、柔らかくふやけていった。

「………ふぅ。スッキリした」

「あ……あ……あ……」

カコは衝撃と絶望で動けなくなってしまったサクヤの表情を見て楽しみ、ニコニコと笑った。

「うふふ。完成~♡ カコちゃん特製のお茶漬けならぬ……『おしっこ漬け』!さあ、召し上がれ♡」

「ああ……そんな! そんな! カコ様、ぼく、ぼく、何か、悪いことを……?」

そう、これまでカコの定めたルールに背く度に恐ろしい罰が與えられてきた。サクヤはこれも何かしでかした自分への罰だと思ったのだ。

「ん?何もしてないでしょ。これは罰じゃないよ。単純にあなたはこれから毎日、私の『おしっこ漬け』を食べるっていうだけよ?」

「ま、毎日……!? あの、えと、どうすれば、やめて、頂けますか!?」

「あら?私の話ちゃんと聞こえた?もう一度言うわよ」

ニヤリと笑い目を細めたカコの唇が、開く。白く美しく整った真珠のような歯の間で、唾液が官能的に短く糸引いた。

「あ・な・た・の・ご・は・ん・はぜ・ん・ぶ・わ・た・し・のお・し・っ・こ・漬・け♡」

カコはハッキリと、ゆっくりと、サクヤにしっかりと分からせるように言った。

この絶望の宣告により、サクヤの心の中の何かが切れた。

カコに飼われるということは覚悟していた。痛い思いをしながら、檻に入れられながら、辛い日々を過ごすのだと覚悟していた。

しかし、心の中で食事だけはきちんとしたものが與えられるだろうと油斷していた。

それなのに、カコが自分に突き付けたのは尿に浸された哀れなパンと米。吐き気を催すような汚物。

カコは笑いながら「おしっこ漬け♡」と言い何の遠慮もなくあっさりと放尿したが、そのカコのサディズムを満たすための容易い行為のせいで自分はどれだけの屈辱と苦痛を味わうかは計り知れない。

「ああ、あああああああ!!!」

サクヤは一度カコへの恐怖も忘れ、自分が裸であることも忘れ、聲を上げながら玄関に向かって走った。『逃げる』以外の全ての思考が無くなったのだ。

「サク、『おすわり』」

「!?」

カコのその號令を聞いた瞬間、玄関まで逃げたサクヤの両手両足からは突然力が抜け、さらに體が嫌というほどやらされた土下座の體勢に勝手になり始めた。

そして土下座の體勢になった後は體が自然と硬直し、全く動けなくなった。

カコはそれを見て、大きく張り出した胸を強調するように腕を組み、満足気に微笑みを浮かべる。

「ふふ。『躾』の成果は上々。ちゃんと反射で出來るようになったのね」

行動を反応から反射の段階に引き上げるのは非常に難しい。プロのスポーツ選手でも、そのためにはかなりの練習を要する。

しかし、カコがサクヤを3時間でこの狀態に出來たように、簡単に『反射』に仕立て上げる方法がある。

「それがこの『

鞭』ね。熱いものに觸れたら離れる動きをする。同じように、體にとって危険なことを避けるために體は反射で動こうとする。だからこそ、さっきの『躾ゲーム』ではしっかりと鞭を打ち込んであげたのよ」

そう。サクヤの體は既にカコの『おすわり』という聲に逆らえば痛みを與えられると認識しており、それを避けるために土下座することまでも『反射』として染み込んでいる。

さらに、土下座の體勢で動くことも出來ない。先程この狀態で鞭から避けるためには『動かない』事が正解だと刻みつけられたからだ。

つまり、サクヤはカコに『おすわり』と言われれば、『よし』と言われるまで決して動けない體になってしまったのだった。

「うう、ううううう!!!」

しかしサクヤは必死に體を動かした。とにかく逃げなければ、逃げないとこの女に鞭を打ち込まれ、奉仕を強いられ、「おしっこ漬け」で飼われる生活が待っている。

だから、逃げなければならない。

頭では分かっていても體はなかなか動かない。サクヤは無理やり體を動かして這うように玄関へ向かった。

しかしそんな動きでは、普通に歩くカコから逃れる事は不可能。

「あら、少しは動けるのね。まあ今日は初日だから完璧な反射にはなっていないんでしょうね」

「あう、あ、許し、て……くだ、さい……」

「何をかしら? まあ、何一つ許さないけど。毎日必ずおしっこ漬けも食べさせてあげる。『躾ゲーム』も毎日やるわ。あなたは私の號令一つで一歩も動けない體になるのよ♡」

チュッカコはそう言うとサクヤの髪を摑んで無理やり顔を上げさせ、涙を流すサクヤの頬に軽くキスをした。

サクヤは涙で歪んだ視界で、カコの唇が自分の顔に近づいてくるのを見た。そのキスは親子や戀人が愛情を持ってするものではなく、草食動物が肉食獣に捕食される直前に見るものに近いような気がした。

「~♪」

そしてカコはサクヤの髪を摑んだまま、今後の調教に思いを馳せた楽しそうな鼻歌混じりにサクヤをリビングルームへと引きずり戻したのだった。

「さて、まずは……ビデね」

「………?」

リビングルームへ引きずり戻されたサクヤは、床に倒れ込んだまま震えながらカコを見上げていた。

『ビデ』とはなんなのか。また恐ろしい拷問だろうか。逃亡に失敗したというだけならまだしも、自分の肉體が內側から奴隷に作り替えられ始めている恐怖を実感させられて、頭がうまく働かなかった。

「さっき私、おしっこしたでしょう?女子はおしっこした後、拭かなきゃいけないよね?」

カコはそう言いながら、サクヤの口に結んである猿轡を解き始めた。

「ぷは……は、はい」

口が自由になったサクヤは、喘ぐように呼吸しつつもとりあえず返事をする。なるべくカコの機嫌を損ねないように行動するのが基本であると思い知りつつあった。

「でさ、普通の女子はトイレットペーパーで拭くんだけど、お股を綺麗に拭くのって難しいじ

ゃん? それに強く拭くと痛いし。もっと柔らかくて、暖かくて、自動で動いてくれるものがお股を拭いてくれたらいいと思わない?」

「は、はい。そうだと思います……」

サクヤはカコの言葉を肯定した。逆らいたくないという思いもあるが、久しぶりに普通に納得出來る言葉がカコから発せられたのも事実だった。

「ん~、でもそんな便利なもの、どこにあるかな? どこにあると思う?」

「へ? あ、えと、わか、分かりません……」

サクヤは唐突に疑問を投げかけられ、困ってしまった。カコが話をどう著地させようとしているのか想像できない。

しかしカコはそんなサクヤの様子を気にもかけず、突然わざとらしく聲をあげた。

「あっ! み~つけた! ここにあった!」

「へ? あの、えと、どこに……?」

「あるじゃん、ほら、ここに!」

「へ……?」

カコはニッコリと笑い、素早くサクヤの口の中に手を突っ込むと、舌を親指と人差し指で挾んで外へ引っ張り出した。

「こ~こ! あなたの舌なら、暖かくて、柔らかくて、自動で動くよね♡」

「は、はひ……?」

「うふふ。まあ茶番はここまで。今後、私がおしっこをしたらあなたは毎回必ず、私のアソコについた尿を舌で舐め取りなさい」

カコはサクヤの舌を指で摘んだまま、整った口元を殘酷に歪めてそう言った。

「あと、これは私が拭くためにやらせるというのもあるけど、あなたにとっては『感謝の儀式』でもあるのよ」

「か、感謝……?」

「ええ。これから私のおしっこをあなたは毎日飲んだり、食べ物にかけられたりするわけだけど、私に飲み物も食べ物も與えられなかったらあなたは困るよね?」

「………は、はい」

サクヤはカコの口ぶりから、これから自分が事あるごとにカコの尿を口にさせられると思い知らされ、少し沈んだ表情で返事をした。

「そう。だからあなたの食べ物や飲み物をおしっこ……いや、あなたには『聖水』と呼ばせましょうか。『聖水』で清めてくれる私のアソコに毎回感謝するべきでしょ?」

「あ、あの、僕、別に清めてほしくは……」

パァン!!

「うぐうっ!!!」

カコはサクヤの顔に強烈なビンタを入れた。サクヤの頬にはカコの手形の真っ赤な紅葉が殘された。

「女王様の言葉に対して、奴隷は『はい』以外答えない。言ったよね?」

カコは少し苛立った表情でサクヤの髪を摑み、悽んだ。

「は、はい……! ごめ、ごめんなさ、い………」

「ま、飲食物を毎日聖水で清めてくれる私のアソコはあなたにとっては聖なる泉。しっかりと舐めて綺麗にするのが奴隷の禮儀、というわけ」

「はい………」

「じゃ、さっそくやってもらいましょうか」

カコはそう言うと椅子に座り、腳を開いて腰を前に突き出した。扇情的でもあるその格好を恥じらう様子は全くない。カコはこれまでの調教経験から、『奴隷の舌は自分の股間を拭くためのものに過ぎない』と心の底から思っているか

らだ。

そこに恥じらいはもちろん、愛情などあるはずもない。奴隷の舌はトイレットペーパー。それだけだ。

「あ、あう、あ、あ………」

サクヤは小さく震えながら、恐る恐るカコの股間に顔を近づけた。

サクヤの心中にはふたつの思いがあった。ひとつは尿を舐めさせられるという屈辱。そしてもうひとつは——(初めて……だ……)そう。サクヤが女性の陰部を目にするのは、これが初めてだった。そのため、散々鞭を打ち込まれ、肛門を舐めさせられ、食べ物に尿をかけられた、憎く恐ろしい相手であるカコのものだとしても、男としての興奮と興味が隠しきれなかった。

カコの陰部は黒々とした茂みに覆われており、その奧には呼吸に合わせて微かにひくひくと動く水棲生物のような割れ目があった。かさぶたに似た色の襞がサクヤの舌を待ち構えるように門を形作り、その奧には粘液で光沢を持った肉の洞窟がある。

「早くしなさい」

「は、はい……」

陰部に見蕩れていたサクヤは我に返り、今からここに付いた殘尿を舐めなければならないということを思い出した。

「ン、ンン……」

サクヤは口から舌を出し、思い切って目の前のものに近づけた。

(うっ……)顔を近づける途中で、ブルーチーズのような強烈な臭い、そして尿特有のツンとした臭いも鼻腔を突いた。

ペロ………

「オエッ……」

カコに聞かれないよう、サクヤは小さくえずいた。そこの味は最悪だった。中心の割れ目のような所に舌を當てたが、小便の塩辛さと膣特有の生臭さを濃縮させたような味がした。

「う、うううう……」

しかし、ここでやめるわけにはいかない。ここで逃げ出したらカコからどんな罰が下るか分からない。

ペロッ、ペロッ………

「うげ、うううう………」

「そうそう。あなたのご飯を聖水で清めてくれた泉よ。しっかり綺麗にしなさい♡」

遙か頭上から、カコがクスクスと笑う聲が聞こえてくる。

サクヤが見上げるとカコの顔の下半分はカコの巨乳に隠れて見えなかったが、自分を馬鹿にするように笑みの形に細められた目はしっかりと見えた。アイシャドウのラメか、長いまつ毛は黒曜石のように輝いて映る。女神のように美しい顔と、恐ろしい怪物の口のような性器が、ひとつの體の上と下にあることがサクヤには信じられなかった。

「うぐ、うぐううう……」

れろれろ、ぴちゃぴちゃ……

サクヤはなるべく味わわなくて済むように、とにかく舌先でカコの陰部を舐め続けた。

「感謝の言葉は? あと、その舐め方じゃ綺麗にならないからしっかりと吸い付きなさい」

(す、吸う……? ここを……?)肛門とは違い、嫌な溼り気と生臭さが強い女性器に口をつけて吸うのはかなりの抵抗があった。

しかし、恐る恐る見上げた先にあったカコの目にはサクヤを許す気配は微塵もなく、サクヤは諦めて口をつけるしかなかった。

(うふふ。可愛い♡)カコは自分を見上げる奴隷の上目遣いが好きだ

った。下から見上げられるなんとも言えない優越感。自分の舌をトイレットペーパー代わりにさせられている奴隷の悲壯な目が楽しい。

さらに、サクヤの小動物的な可愛らしい顔も相まって。カコのサディズムは程よく擽られる。

やはり弱者を甚振り、強者である自分に奉仕を強いるのは最高の気分になれる。

カコは口元に笑みを浮かべたまま、ピンと勃つ自分の乳首を人差し指で優しく撫でた。

ピチャ、ヌチュ……ちゅうううう………

「うふふ。そうそう。あなたに恵んだ聖水、全部吸い出しちゃいなさい♡」

「は、はい……」

サクヤは意を決して口をつけ、カコの陰部を吸い始めた。

口の中に殘尿に加えて少しずつ溢れ始めたカコの愛液が流れ込み、舌に嫌な味が広がりぴりぴりとした痺れを感じた。

しかしこの嫌悪感に従って口を離せば、カコの鞭が容赦なく降り注ぐということは理解している。

「ほら、感謝の言葉は?」

「あ、ごめ、ごめんなさい! あ、ありがとう、ございます……」

れろれろ、ちゅううう……

サクヤは必死にカコの陰部に舌を這わせながら、言いたくもない『感謝の言葉』を考え始めた。

「ぼ、僕の、ご飯に、おしっこをしてくれて……ありがとうございます……!」

サクヤは言いながら、少し涙をこぼしてしまった。何故、自分のご飯に排尿されて、感謝しなければならないのか。しかも、その小便に汚れた穴を舐めさせられながら。

しかし、舌を止めるわけにはいかない。感謝の言葉が終わったらすぐに陰部に口をつけ、尿の舐め取りを再開しなけれぼならない。

ペロ、ペロ……ヌチュ、ヌチュ……

「おしっこ?違うでしょう?私にとってはただの尿だけど、奴隷のあなたにとっては何だっけ?」

「ああ、ごめんなさい! ごめんなさい! せ、聖水を……聖水を出してくれてありがとうございます……!」